MDブームの終焉

カセットテープを置き換えるものとして生まれたMDは、1枚あたりの録音時間が60/74/80分と定められていました。

後期には2~4倍の録音が可能なモデルも登場しましたが、メディアの入れ替え不要で、手のひらサイズの筐体1つにアルバム何枚分もの曲を保存でき、さらに自分だけのプレイリストをいくつでも作成できるポータブルオーディオプレーヤーのほうが利便性に優れていました。

そりゃあ、民意も得られるってヤツです。

そんなポータブルオーディオプレーヤーも今や影を潜め、音楽再生機器は前述したようにスマートフォン一強時代。音楽そのものもメディアの存在が消え、サブスクリプションのストリーミング全盛期です。諸行無常です。

いまやレトロ感すら漂う
いまやレトロ感すら漂う
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こうして1990~2000年代のパーソナルな音楽リスニング環境をまとめると、MDは狭間にある存在のように見えます。1990年代初頭のデジタルの利便性を追求した結果、あとから生まれたデジタルオーディオ規格や再生システムに上書きされてしまうのは、ある意味仕方のないことでしょう。

それでもカセットテープから、現代のプレイリストに連なる“美味しい曲だけまとめました”という楽しい文化のバトンを繋いでくれた存在ですし、カードサイズで1時間ほどのストーリーを耳で追えるメディアとしての価値もある。

ビンテージなガジェットとしても魅力は残るでしょう。特に録音可能なMDメディアはカラフルで、キラキラとしているから、音楽の思い出を残すブックマークとしてぴったりな存在ですから。

文/武者良太 写真/shutterstock