子どもたちよりも深刻なのは「親の変わらなさ」

また、少年たちだけでなく、その親たちとも向き合ってきたA氏。しかし、「少年の変貌」よりも、「親の変わらなさ」のほうが深刻だったという。

「少年と親の面会には、数多く立ち会いました。でも、いきなり説教を始める親や、少年が何を言っても無関心な親が多く、少年の目を見て話を聞く姿勢の親は、ほんのわずかでした。

家庭環境が悪い中で育った子どもは、そもそも家庭が安心できる居場所ではないため、再犯率も高く、少年院に戻ってくるケースも少なくありません。子どもの目を見て、その様子を見守る――そんな当たり前のように思える姿勢が、彼女らの親にはありませんでした」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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また、父親や成人男性から薬を打たれ、苦しんできた少年を多く見てきたA氏だからこそ、ある思いに駆られたことがあったという。

「女子少年の犯罪の裏には、男子少年や成人男性、そして実父や義父の存在があることが多かったです。特に薬物系は顕著。だからこそ、『また男のせいか……!』と苦しくなることもありましたね。

女子少年の多くは、加害者になる前に被害者なんです。女子少年院は、社会の泥をすくって、綺麗に返していくような場所でしたね」

A氏は、法務教官として生涯働き続けていきたいと考えていたが、家庭の事情やさまざまな要因から離職。しかし「将来は保護司になりたい」と今の心境を語る。

「少年のためになることをしたいという思いは、今でもずっと残っています。今後の人生のどこかで、それを実現できればと思っています」

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班