入浴中に湯船の中で自慰行為を始めてしまう子も

「薬を打たれてやったセックスが忘れられなくて辛い」

また、薬物依存症の少年が性依存に苦しむ姿も見たという。

「覚醒剤依存の少年のほとんどは、父親や周辺の成人男性に無理やり薬を打たれたり、誘われて打ったりしてしまうケースがほとんどです。そして、もれなく近親相姦やレイプ、セックスに誘われています。

『薬を打たれてやったセックスが忘れられなくて辛い』と相談を受けたこともありますし、自由帳に『シャブやりたい、セックスしたい』と書き殴る子や、卑猥な絵を描く子もいました。中には、週2回の入浴中に湯船の中で自慰行為を始めてしまう子もいました」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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また、出所を迎えたものの、「この子は本当に更生できたのだろうか」と疑念が残る少年もいた。その子は14歳にして地元の“ドン”のような存在になり、さらに1児の母でもあったという。

「その子は、売春をはじめ、薬物や暴力など、あらゆることを経験していました。私たち教官を騙したり、困らせたりすることをおもしろがっていて……。

たとえば、『頭が痛いから薬がほしい』と言うので頭痛薬を渡したところ、別の教官には『A先生にお腹の薬を頼んだのに、頭の薬を渡された』と言い、私が始末書を書く羽目になったこともありました。

満期を終えて出所しましたが、更生してまっすぐな道を歩む少年がほとんどの中で、その子は異質な存在でした」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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一方で、見違えるように更生した少年もいたという。それについてA氏は、「あのような瞬間に立ち会えたことは、なによりの宝物」と語る。

「その少年は不良グループでの窃盗恐喝などの罪で入所したのですが、院内でも粗暴で反抗的な態度が目立ち、集団生活ができずに独居で過ごしていました。

でも、あるキリスト教団体から贈られたお菓子と、『主はみんなを見ている』と書かれた小冊子を読んだそうです。その内容に感動したのか、『神という存在を初めて知った。これを指針に生きていける』と内省ノートに綴っていました。

その後は表情からも警戒心が薄れ、態度も穏やかになり、ついには独居から集団部屋に移ることができました」

あわせてA氏は「人からの指示ではなく、自ら手にして読んだものだからこそ、彼女の心に響いたのだと思う」と話す。