タトゥーを消すことで社会貢献

タトゥー除去を始めたきっかけは、美容外科医を始めた際の決意からだという。

「医学部卒業後、麻酔科医・救命救急医として12年勤務した後、非常勤で働いていたこともあり、美容外科医に転向。大手の美容外科クリニックに入職しました。

その際にいろいろ指導してくださった先生が、刺青除去の治療を率先してされていたんですね。これはいい治療だと思い、教わることにしました。

美容外科の業界では、今、『直美(初期研修を終えた後に直ぐ美容医療に進む医師)』の問題が取り沙汰されています。美容外科医って国のお金で医師になりながら、なにも社会に貢献していないって言われがちな存在じゃないですか。

私自身は長らく一般診療の医師としてやってきましたし、地域医療なども行なっていたので、ある程度の貢献はしてきたつもりではいるのですが、美容医療の世界に来たから医師としての社会貢献をやらなくていい、というわけではないと考えています。

そう考えると、タトゥーがあることで人生の再スタートを諦めてしまう人に希望を持ってもらうというのは、人を助けるという意味でも立派な社会貢献ではないかと思ったんです。

というわけで、一般のクリニックよりかなり抑えた価格で治療をしています」(めかた院長、以下同)

同クリニックで各種取り揃えた最新のレーザー機器は、1台約2000万円だという。

「クリニックの中に、フェラーリが何台もあるようなものです(笑)。これらを、タトゥーの範囲や色素の種類、深さによって使い分けたりしています。

レーザー治療は、1回の時間は小さいもので1〜2分、広範囲で1時間程度ですが、1か月に1回から2~3か月に1回のペースで、いずれにせよ5回から10回は必要です。

普通のクリニックの場合、ひとつのレーザー機器で施術を済ませるのですが、私の場合は機器を組み合わせて、きめ細やかに対応をしています」

きめ細やかに対応とは一体どのようなことをしているのか。

「例えば、いわゆる墨の場合と、カラフルな色素の場合、レーザーの波長や種類を使い分けたほうがいいです。

また、色素に含まれている成分によっても違います。和彫りの場合は『墨』が基本ですが、墨汁なのか、墨をすって作った液なのかで、粒子の大きさが違う。粒子の大きさの違いで破壊するレーザーの強弱を変えなくてはならない。

きれいな色味を出すために金属系の成分が入っていることがあったり、ペンキ由来の色素や、ヘナといった植物系の色素の場合もある。対応方法が実にさまざまです。

それだけでなく、タトゥーの彫り方や色素に地域性があるようです。ヨーロッパで入れたというタトゥーは、消すのがすごく大変なんですよ。でも、タイなどの東南アジアで入れたというものは、意外と消えやすかったりします」

2年の治療で綺麗に消えた刺青(写真提供/キルシェクリニック)
2年の治療で綺麗に消えた刺青(写真提供/キルシェクリニック)
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