ピロリ菌感染者は保険で除菌治療が受けられる

ピロリ菌が発見されたのは1984年、いまから40年前にさかのぼります。

それまでは、強力な殺菌作用を持つ胃酸によってガードされているため、胃の中ではどんな細菌も生息できないと考えられていたのです。そんな常識をくつがえしたのがオーストラリアの医学者、ロビン・ウォレン氏とバリー・マーシャル氏です。

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彼らは、胃炎状態の胃の中に生息するピロリ菌を発見し、ピロリ菌の培養にも成功しました。しかし、ピロリ菌が胃炎の原因になるという仮説をなかなか信じてもらえなかったことから、マーシャル氏自らピロリ菌を飲み、胃炎が起きることを証明するという驚きの実験を敢行したのでした。

結果、10日目に急性胃炎を発症したマーシャル氏は、腹痛に苦しみながらも実証に成功。二人は2005年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。

日本において、胃がん対策としてピロリ菌除菌治療が保険で受けられるようになったのは2000年代に入ってからです。

まずは2000年に、胃潰瘍・十二指腸潰瘍がある場合に対して保険適用に。その後2010年には早期の胃がんの内視鏡治療後のピロリ菌除菌、さらに2013年には、ピロリ菌感染による胃炎に対して保険で除菌治療ができるようになり、ピロリ菌感染者は今や誰でも、保険で除菌治療が受けられるようになりました。

かつてピロリ菌は、10歳以下の子供のときに家族間の唾液や井戸水など汚染の可能性のある水を飲むことから感染していました。

現在は衛生環境が整備されて若い方の感染率は低下していますが、中高年では未だ6~7割の方が感染していると言われています。