「コメの買取価格が上がっても肥料代や燃料代も上がってるし」

「米騒動」を経てJAの買い取り価格も上がったが、並行して肥料代や燃料代も高騰している。

「この地域でのJAのコメの買取価格は30キロ7500円~12000円になりました。倍近くは上がりましたね。ただ肥料も2500円から4500円に値上がりしているし、燃料代も高くなっているので大して儲けはありません。今年は口座に40万円程度振り込まれていたんで『ああ、ようやく少し利益が出る』ってくらいのもんです。

JAを通しているコメ農家は肥料や燃料などすべてJAで用意してもらい、 作ったコメを納めます。販路のことを考えずに生産に専念できる一方で、買い取り価格が安価なことに加えて、他にもいろいろとお金を引かれます。例えばできたコメを家まで引き取りにきてもらうと、1俵100円とか取られるし、コメを保管してもらうのにも3000円とかとられるんですよ」

写真はイメージです
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口座に振り込まれるのは、そうした経費を差し引いた額だ。Aさんは通帳でそれを確認する度に、がっくりとうなだれてきた。

「会社組織で農業をしてる人たちはだいたいは独自の販路でさばくんだけど、一部はやっぱりJAに納めるんですよ。私らみたいな個人の農家はもちろんのこと、JAに納めた実績がないとJAから冷遇されるんじゃないかと懸念があるんですよ。だからほとんどの人が肥料もJAを通して購入しています。

実際に何か冷遇されることはないのかもしれませんが、そんな空気感があるんです。去年の新米の時期にはJAの担当者も『コメの集まりが悪い気がする』とボヤいていましたが、個人だろうが会社だろうが高く買い取ってくれるところがあればそちらに売っているんだと思いますよ。

ただ、極端に例年と比べてコメの量が減るとJAに『何でこんな少ないの?』と思われるので、まだ遠慮がちにやっているという感じなんでしょうけど。まあ、個人のコメ農家は今後も減る一方で、もう大きいところしかやっていけなくなるでしょうね。

会社単位でやっている大きなところは国からの補助を受けているところが多いですが、個人では補助の対象になる条件を満たすのが現実的ではなく、補助は受けていません。なので、農機具だって高いから買えませんわ。だから農機具メーカーも個人農家のところには顔も出さなくなっています。このまま個人農家が減少していけば、最後はJAが自分たちでコメを作るようになるんでしょうね」