米泥棒による被害も深刻化
前出の農家の男性にコメの値上がりについて尋ねるとこう答えた。
「野菜も高騰していますが、コメの値上がりばかりが大きく騒がれているように思います。
JAグループがコメ農家に支払う『概算金』の引き上げのせいでコメが値上がりしているという人もいますが、飼料費や農機具などが物価の上昇に伴って上がっているわけですから、仮に20%増になったとしても私たち農家は儲かりません。
昔はもっと安かったのですが、トラクターって今の価格だと1000万円近くするんですよ。農機具も値段が上がっているんです。
そうするとコメの値上がりでいったいどこが儲けているのかという話になりますが、値上がりを見越して仕入れを行なっていた中間業者や、直売や直売サイトなどの販路を持っているコメ農家は儲かっていると思います。
JAに卸すという従来のやり方でやっているコメ農家は、今の価格でようやく赤字ではないといった程度だと思います。今までが安すぎたという側面があるので、私らからすると概算金が下がってしまったら厳しいというのが本音です」
また、コメの高騰によって昨年は米泥棒による被害も深刻だった。収穫時期の8月末から11月までをピークに全国各地でコメの盗難事件が多発していた。
奈良県山添村では昨年9月に30キロ入りの玄米40袋、1.2トンが倉庫から盗まれるという事件が起きていた。奈良県内のJA関係者が当時を振り返る。
「事件の後、私の所属する部署がコメの盗難について注意喚起のメールを農家さんたちに送りましたが、私の記憶する限り、奈良県においてコメ泥棒に関する注意喚起のメールを送ったのは初めてです。
明らかにコメの価格が高騰したことで目をつけられたのだと思います。
防犯カメラなどの取り付けを推奨していましたが、今年もコメの価格が高いままならまた起こる可能性もあるので、収穫時期には注意しないとですね」
「令和の米騒動」から始まった歴史的なコメの価格高騰について、江藤拓農林水産相は『投機的なマネーゲームということは明らか』と述べている。
果たして、備蓄米の放出で思惑通りコメは売りに出されるのだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 サムネイル/Shutterstock