“仕上がった”西友の食品スーパー化
昨年、西友の大久保恒夫社長は日本経済新聞のインタビューに答えており、西友における「アパレルの売上高は5%以下」だと語っている(「西友・大久保社長 データ分析で特売減らし、安売り脱却」)。
実はこの数字は日本チェーンストア協会のものにも当てはまる。2024年の衣料品の販売構成比率は5.1%なのだ。つまり、西友は総合スーパーから食品スーパーへと軸足を移したが、それは業界全体の流れと合致する。
それでは、西友は食品スーパーとしてさらなる成長が狙えるだろうか? それはなかなか難しそうだ。
西友はKKRが買収して大久保恒夫氏が社長に就任した後、希望退職者の募集などで経営改革に乗り出した。西友単体の2023年12月期における営業利益率は3.9%であり、前期から0.9ポイント上昇している。西友のように売上規模が1000億円以上のスーパーの営業利益率は2.8%ほど(「2024年 スーパーマーケット年次統計調査」)であり、西友の稼ぐ力は突出している。
大久保社長は収益率を高めるため、無駄な特売を減らすなど、価格を軸とした改革も進めてきた。もともと、スーパーは安売りを仕掛けて売上を追う商習慣にとらわれている傾向があったが、大久保社長は安売りよりも品質を高めることを重視し、利益が出せる体制へと変化させたのだ。
ポイントはそれを消費者がどう受け止めるかだ。
前出のマイボイスコムでは、「価格が最も魅力的だと思う大手スーパー」のブランド調査(「【大手スーパーのブランドイメージに関する調査】」)も行なっているが、KKRが買収する前の2018年5月の調査で、西友と回答したのは15.8%。利益重視へと変化した後の2023年5月の調査では12.0%まで低下しているのだ。
一方、「最も品質がよいと思う大手スーパー」で、西友との回答は4.4%から4.1%へとわずかに下がっている。つまり、大久保社長が改革を行なった後の西友は、安売りを改めることで利益率の向上を果たした。しかし、消費者の価格に対する評価は下がり、品質評価は横ばいというわけだ。
この数字だけで判断すると、西友の「食品スーパー化」は現時点ですでに仕上がっており、さらなる成長は別の領域に残されていることになる。そしてそれは、売上構成比率が5%以下にまで下がった「衣料品」に焦点が当たると考えられる。