「アピタ」「ピアゴ」の衣料品の売上構成比率は10%
かつてウォルマートの傘下に入っていた西友も、やはり衣料品での立て直しを計画していた。その際、スーパーの「安くてダサい」というイメージを覆すべく進めていた「SEIYU FASHION PROJECT」のなかで、イギリス発のプライベートブランド「George」を強化したのだ。
このブランドはウォルマートのイギリスの子会社が手がけていたファストファッションだが、ファッション性が高く、価格も安かった。子供服の強化も図ったものの、やや奇抜で日本人の嗜好に合わずに消えていった。結局、当時の西友は衣料品の販売に弾みをつけることができず、ウォルマートが手を引く形でKKRに主導権が移った。
こうした歴史もありながら、総合スーパー各社は衣料品の改革を進めている。
イオンリテールは、2023年からは従来のオペレーションと売場環境を一新した専門店モデルを構築。年齢や利用シーンに合わせた6つの専門店を一部の店舗で導入、売場改革を進め、展開するブランドにも手を入れている。カジュアル部門をイオンリテールの子会社トップバリュコレクションに移管、統合した。その後、カジュアルブランドを「トップバリュコレクション」から「TVC」へと刷新した。
イトーヨーカドーも2024年2月、「niko and...」などを手がけるアダストリアとの協業開始を発表。新たなブランド「FOUND GOOD」の展開に乗り出している。
西友の買収にはイオンのほか、「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)も手を挙げているようだ。PPIHは、現在伸長している「アピタ」や「ピアゴ」といった総合スーパーを扱っているが、2024年6月期の総合スーパー事業における衣料品の売上高は445億円で、構成比率は10.8%と高い。
この事業が展開するオリジナルアパレルブランドは、防汚加工・制菌加工などを施したワイシャツや、通気性が高く軽量化かつストレッチ性があるボトムなど、機能性を高めた商品を数多く取り揃えている。
衣料品の改革に邁進するイオンと、高機能商品の販売で衣料品の売上構成比率が高いPPIH。両社ともに西友の売場は魅力的に映っているはずだ。
取材・文/不破聡 写真/shutterstock