電気も水道もない生活。不便なのは「他人が家の敷地内で寝ていて……」

――現在、お二人は島民の男性と結婚されていて、ゆうこさんには9歳の長男と4歳の次男が、よしえさんには9歳の長女、5歳の次女、3歳の長男がいるんですよね。旦那さんとの馴れ初めは?

よしえさん よく「移住のきっかけは、旦那さんですか?」と聞かれるんですが、そうじゃなくて……。2人とも移住したあと、向こうからアプローチがあって、付き合い始めました。

よしえさん一家(提供/よしえさん)
よしえさん一家(提供/よしえさん)

ゆうこさん でも、移住した当初は、まさかこんなに長く住むことになるとは思ってもいませんでしたね。子どもが繋げてくれた縁だと思っています。 

ゆうこさん一家(提供/ゆうこさん)
ゆうこさん一家(提供/ゆうこさん)

——島民は普段、どのような生活を送っているのでしょうか?

ゆうこさん 日用品は、島内にある小さな雑貨店で購入していて、そのお店にはセブ島本土から仕入れたものが並んでいます。

生活用水は雨水を貯めてろ過し、洗濯もその水を使って手洗いしています。島内の各家庭に水瓶があり、そこから桶やバケツなどですくって使っています。

毎回水を運ばなければいけないし、使える量が限られているので、けっこう大変なんですよ。その水瓶に溜めていた水がなくなったら、船を出して他の島に水を買いに行きます。

——それだと、トイレの際にも大変そうですね。

よしえさん 30年ほど前まで全員海で用を足していたそうなんですが、今では水洗トイレがあるので。ただ便座は備わっていないので、産後のトイレは痛くて大変でした。

島にある日用品店「サリサリストア」(写真/本人提供)
島にある日用品店「サリサリストア」(写真/本人提供)

——1カ月の生活費は、だいたいどのくらいなのでしょう?

よしえさん 5人家族で、1ヶ月4万円くらいです。島民は魚や貝を獲るのが得意なので、その日に自分や家族が食べる分を海に採りに行く人も多いです。それ以外の食材は、セブ本島から輸入しています。

島の収入源は主に観光業で、ビーチでお土産や魚を売って生計を立てている島民も多く、その日暮らしの人も少なくありません。

あと島には電気が通っていないため、ソーラーパネルで自家発電しています。そもそも電気自体 がない家もたくさんあって、夜は20時〜21時頃には寝る人が多いです。

ネット環境も整っていませんが、宿泊者向けに1時間100ペソ(約265円)でWi-Fiを利用できるようにしています。

——島で暮らしていて、不便に感じることはありますか?

ゆうこさん 島民は自然に対する畏敬の念を持っていて、「神様から食べ物をいただいているのだから、みんなで分け合うのは当然」と思っているんです。

だから、不便さを感じるのは、夫が食事を近所の人にシェアして、家からお皿がなくなったときくらいですね(笑)。

よしえさん もう10年暮らしているので、不便さを感じることはほとんどありませんが、他人が勝手に家の敷地内で寝ていることがあって……。その人の寝息で起こされると、さすがにびっくりします(笑)。

あと、敷地内に勝手に洗濯物を干されることもあります(笑)。

——ちなみに、病気になった場合はどうしているんですか?

ゆうこさん 島にはミッドワイフという助産師の資格を持っている島民が勤務するヘルスセンターがあり、そこで薬を処方してもらうことができます。

軽度の場合は、草木を煎じて治すこともあります。病院にかからなければならないケースでは、船でセブ本島まで行く必要があります。

明るく島での驚きの生活を語ってくれたお二人(写真/YouTubeチャンネル「愛と豊かさの島・カオハガン島」より)
明るく島での驚きの生活を語ってくれたお二人(写真/YouTubeチャンネル「愛と豊かさの島・カオハガン島」より)
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——お二人は島に永住する予定ですか?

ゆうこさん 人生は何が起きるかわからないので、先のことは何とも言えません(笑)。でも、私はこの島で子育てをしたいので、子どもが大きくなるまではここにいたいと思っています。

よしえさん 15年前の私は、5年後にカオハガン島に住んでいるなんて、まったく想像もしていませんでした。子どもたちは島の学校に通っていますし、流れに身を任せて、今の環境を楽しみたいと思います。

——2人は「これからも島のよさを発信し続け、多くの人に魅力を知ってもらいたい」と今後の目標を語ってくれた。「何もなくて豊かな島」で暮らす2人の日本人女性は、家族や島を愛する気持ちで満たされているような印象だった。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班