“定価割れ転売”最大の問題とは…
チケットの“定価割れでの転売”を受けて、SNSでは反響が相次いでいる。
〈これを問題にして本人確認を徹底とかしたら益々入場者が減るでしょう〉
〈関西人ですが予想通りですね。そのうち無料券も福引や抽選イベントなどで出回ると言ってきたが、そのような雰囲気ですね〉
〈いきなり定価割れで転売というあたりマーケットは正直だなと思います〉
〈捌ききれないほどのチケットを過剰に渡し、チケットは順調に消化されていると評価している運営側がよっぽど問題である〉
この現状は、万博にどのような影響をもたらすのだろうか。企業や団体のマーケティング戦略などを研究している文京学院大学経営学部の濵田俊也教授に聞いた。
「不正転売によって2025年日本国際博覧会が被る悪影響については、言い尽くせないほど多数あるとは思いますが、特に私が問題だと考えるのは正規の販売チャネルを壊している点です。
チケット販売は事業主体以外にもシステム運営者や配送担当など多数のステイクホルダーが関わっており、正常な販売を前提として複雑に構築された仕組みがあります。『自分だけ』『一回だけ』という不正がチケット販売に関わる団体・企業の関係を壊し、関係者の努力を無にすることにつながってしまいます。
国や自治体、企業がそれぞれのリソースを持ち寄って大規模に行なわれる2025年日本国際博覧会だけに、回り回って不正転売者や不正購入者自身にも悪影響が及ぶ可能性もあります」(濵田教授、以下同)
また、チケットを今の段階で手放して転売していることは、その人にとっても“損”になっているのではないかと濵田教授は指摘する。
「今チケットを手放すことは、将来チケット価額相当か価額以上の満足が得られる価値のあるものを、現時点で得られる程度の低い金額に換えてしまっているといえるのではないでしょうか。
すぐ手に入る報酬ほど価値が大きいと感じ、手に入る時間が遅くなると価値をだんだん小さく感じることは『時間選好』とよばれ、行動経済学やマーケティング論、消費者行動論などさまざまな学術領域で研究されています」