恋愛に踏み出せない理由
――まずは中川さんの新刊『独りで死ぬのはイヤだ』について、又吉さんの感想をお聞かせください。
又吉 すごくわかるところがいっぱいありましたね。特にそう感じたのは、女性と二人で出かけた帰り、相手のことをいいなと思ってるけど、「もう今日は早く帰りたい」ってなる場面で(笑)。
僕もわりと毎回そうなってしまうんですよ。緊張感を持ってごはんとか食べて、大きなミスをせずに終われたらもうやり遂げた感があって「早く一人になりたいな」って。同じ人と2回目に会うときに異常にパワーがいるっていう話もわかるし、思い当たる節がたくさんありました。これは僕と中川さんの世代が近いからなのか、それともそういう傾向にある人が一人でいる確率が高いのか、ちょっとまだわからないですけど。
中川 すごく嬉しいです。好きな人相手でも「そろそろ帰りたいな」ってなるとか二度見知りするとか、僕が言いたかったことを又吉さんに共感していただいて。
又吉 好きでもそうなるんが、ややこしいところですよね。
中川 そうなんですよね。好きだからこそというか。
又吉 好きな人に嫌われたくないですもんね。就職氷河期って言葉も出てきますよね?
中川 出てきます。
又吉 1980年生まれなんで僕もそうなんですけど、多少そういうのは影響してるんじゃないかなと思うんですよ。僕らが子どもの頃に観てたドラマとかで繰り広げられる恋愛って、それなりに良い店でごはん食べてバー行って、おしゃれな部屋で一人暮らしして、家族といえば一軒家に住んでペット飼って車があって……って感じやったじゃないですか。
そういうものを観て育ってきてるから、自分が20歳ぐらいになったとき、そこで描かれていた“大人”とは程遠く感じるんですよね。そんな状態で自分に自信を持つのは結構難しい。恋愛に関してもそこで何かひとつ壁があったんじゃないかな、っていうふうに作品を読みながら思いました。
中川 わかります。テレビを観てると豊かな情報が流れてきて、子どものうちは「だんだん自分もこうなっていくのかな」と思うんですけど、大人になるのが近づくにつれて「なれなさそうだ」って予感がしてくるんですよね。で、いざ大人になってみるとやっぱり「あ、なれないんだ」って結果が待っていて。
又吉 「親戚の子どもにどうやってお年玉あげんねん」とか、思いますよね。














