1つの国が強くなりすぎないように
そこであなたは、「隣人に負けないように、もっと強くならなければ」と考えて、より強力な武器を手に入れようと努力します。しかし、今度はあなたの行動を見た隣人も同様に「もっと強くならなければ」と感じます。こうしてあなたと隣人はどんどん強くなっていきます。
この競争が続くうちに、お互いに「これ以上の力は必要ない」と感じるときが来るかもしれません。それは、どちらも相手と同じくらい強くなり、相手が攻撃しようとしても自分も反撃できるくらいの力を持っていると認識するからです。
こうして両者が同じくらいの力を持ち、どちらかが攻撃してもおそらく失敗する、「力の均衡状態」が成立します。こうなれば、お互いに攻撃を仕掛けても意味がない状態が確立されます。
国家間でも同じような関係が成立します。人間や動物と同じく、国家は「生き残り」を至上目標とします。国際社会には警察がいないので、各国は強くなって他の国から自らの生存を守らなければなりません。しかし、周りの国々もそれに対抗して強くなり、力を均衡させようとします。この力が均衡した状態を「勢力均衡」と呼びます。
ここでいう「勢力」とは、ある国が他国に対して自らの意思を押し通す能力、要するに「国の強さ」を表します。一口に「国の強さ」といっても、完璧に測ることはできません。経済力や軍事力は良い指標ですが、それだけで勢力は決まりません。
例えば、日本は経済力でロシアを上回っていますが、ロシアより強いかというと、そうでもありません。ロシアは領土、人口、軍事力、その他多くの側面で日本を上回っているからです。とはいっても、世界には「強い国」と「弱い国」が確かに存在します。アメリカは明らかに強い国ですし、ニカラグアは明らかに弱い国です。勢力はこうした国の大体の強さを表します。
勢力均衡を全世界規模で保つために大事なのは、1つの国が強くなりすぎないようにすることです。1つの国が他の国よりも圧倒的な勢力を得ると、その国は他のすべての国を征服できるようになってしまいます。