「それでも僕はアナログで漫画を描き続けていきたい」荒木飛呂彦が見据える漫画におけるデジタルとAI、日本文化の未来とは
世界的にも評価される『ジョジョの奇妙な冒険』の作者・荒木飛呂彦氏。中でも、その絵の芸術性の高さと独創性はひと目見ると忘れられないほど印象的である。
デジタル全盛の今でも手書きにこだわるという作品作りに対する想いと、日本の漫画文化の将来への率直な気持ちを、書籍『荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方』より一部を抜粋・再構成しお届けする。
荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方 #4
漫画と日本文化の将来
今の時代、娯楽の中で漫画が占める位置は以前ほどではないかもしれません。それでも、漫画はアニメやゲームなどエンターテインメントのベースになっていますし、ファッションの潮流にも影響を与えるなど、漫画はさまざまなカルチャーの源と言えます。おそらく漫画というジャンルそのものが衰退することはないでしょう。
だからこそ、もっと漫画界が盛り上がってほしいと思います。
「漫画ってなんだろう」と改めて考えてみると、その本質は日本美術の文脈に則った文化だということに行き着きます。
有名なところでは「鳥獣戯画」などが思い浮かびますが、漫画は古代以来の日本の絵画から生まれ、日本の文化が育ててきたもので、そこには、絵師のような日本独特の絵を描く職人システムも含まれますし、絵の技法や表現もやはり日本ならではのものがあります。
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アメリカやフランスにも漫画はありますが、それらと日本の漫画の決定的な違いは、西洋絵画とは異なる日本独特の絵画技法、たとえば葛飾北斎の浮世絵が平面にものすごいスケール感を感じさせるように、平べったいのに何か動いているような感じを線で表現したり、そういう線で自然物や目に見えないものまで描いてしまったりするというところだと思います。
手塚治虫先生が偉大なのは、あの膨大な作品群を生み出したことに加え、そうした日本的な漫画の表現にさらに「感情」を入れていったことです。海外の漫画はストーリーだけを追っていく仕立てですが、手塚先生以降の日本の漫画は、ストーリーが展開していく中に登場人物たちの心情や人間の美しさをぐっと入れていき、独特の情感を感じさせます。
そういう漫画の伝統はイタリアの芸術やハリウッドの映画にも匹敵する、日本ならではの世界に誇る文化と位置づけるべきものでしょう。にもかかわらず、日本で漫画は「クールジャパン」のコンテンツ的なサブカルとして低く見られがちなのは、もどかしい限りです。
漫画の価値が正当に評価されない状況が続けば、今後、漫画文化の拠点は外国に移っていくかもしれません。
デジタル化が進んだおかげで、世界中で漫画が読まれるようになり、より多くの人に漫画が愛されるようになったこと自体はとても喜ばしいと思っています。『漫画術』が世界各国で翻訳されているのも、「漫画を描きたい」という海外の人が増えているからだと思いますし、日本の漫画に影響を受けて、世界で漫画文化が発展していくと考えるとワクワクします。
そうした海外での漫画の隆盛を見るにつけ、日本も漫画をもっと大切にしてほしいな、と思います。漫画は日本文化の文脈から生まれたものなのですから、これからも世界の漫画文化を牽引していくためにも、その最大の発信地は日本であり続けてほしいです。
漫画・イラスト/書籍『荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方』より
写真/shutterstock
2024年11月15日発売
1,034円(税込)
新書判/224ページ
ISBN: 978-4-08-721338-6
◆内容紹介◆
世界の16の国と地域で翻訳刊行されるなど、いまや古典となった『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)から10年。
だが、ある時、『漫画術』を読んで漫画家になった人もいるとしたら、「もうちょっと深い話も伝えておかなければならないのではないか」と、荒木は考えた。
『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズをはじめとした荒木作品に登場する名悪役たちの魅力とリアリティはどのように生まれるのか?
漫画の王道を歩み続けるために必要なことは?
いまだ語られなかった、漫画家・荒木飛呂彦の「企業秘密」を掘り下げた、新・漫画術。
◆目次◆
第1章 漫画の「基本四大構造」を復習&さらに深掘りする
第2章 超重要! 悪役の作り方の基本
コラム 『ジョジョ』歴代敵キャラについて
「悪役の作り方」実践編 その1 岸辺露伴の担当編集者・泉京香の作り方
「悪役の作り方」実践編 その2 一から悪役を作ってみる
第3章 漫画の王道を歩み続けるために
番外編 『The JOJOLands』第1話とコマ割りについて
ほか、ディオ、吉良吉影、ヴァレンタイン大統領の身上調査書も公開!
2024年12月18日発売
572円(税込)
新書判/184ページ
ISBN: 978-4-08-884298-1
ルルちゃんの「バグス・グルーヴ」により負傷したウサギを治療するため病院を訪れたジョディオ達は、HOWLER社が差し向けたもう一人の追っ手、ボビー・ジーン捜査官に遭遇する。スタンド2体による同時攻撃に防戦を強いられるジョディオは…!?
JOJO magazine 2024 WINTER
荒木飛呂彦
2024年12月18日発売
1,980円(税込)
B5判/304ページ
ISBN: 978-4-08-102425-4
“JOJO”を愛する全ての人に贈る…1冊全部JOJOの本第4弾!!
描き下ろし
★荒木飛呂彦[カバーイラスト]
巻頭企画
★荒木飛呂彦×ステンドグラス
★『続・荒木飛呂彦の漫画術 EXTRA TALK』
特集
★JOJOで描かれる女性たち
★暗殺チームのすべて
スピンオフ漫画
★うすた京介[間田敏和の微妙な冒険]
★西尾維新×出水ぽすか[魔好青年ビーティー]
スピンオフ小説
★尾北圭人[オレ自慢の針と糸]
付録★JOJO magazineスペシャルステッカー2枚組
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