未来を見据えた、社会全体のための政策を
社会保障制度の問題点が見えてきたところで、具体的な政策提言はあるのだろうか。
「例えば健康保険でしたら、高齢者の医療費負担の割合の変更、高額療養費制度を見直しで1兆円減。そのぶん社会保険料の引き下げが可能です。
先ほどお話しした『子ども・子育て支援金』についても、1兆円の不足予算分を一人あたり500円ほどの社会保険料への上乗せで賄おうとしているのですが、ほかの財源や行政改革による歳費削減などで捻出することで回避できます。こちらは、2026年から行われる負担増・上乗せを事前に法改正で廃案にできる機会がまだあるので、各野党に取り組んでいただけるよう働きかけたいですね」
社会保険料は、実は企業と個人の折半で支払われている。それについても提言したいことがあるという。
「会社員の給与明細に社会保険料の企業負担分も明示することを義務化したいです。企業が肩代わりしている社会保険料は、人件費なわけですよね。本来、労働者がもらえるはずのお金なんです。
その金額を明示することで、国が本当はいくら社会保険料を取っているのか可視化されます。きっと、『えっ、こんなに?』と驚くと思いますよ。そうしたら、社会保険料について考えるきっかけになると思います。もっと多くの人が現状の制度を疑問に思うはずです」
社会保障制度の改革はいわゆる現役世代向けの政策であり、反発する高齢者が多いのも事実だ。高齢者の投票率が高い限り、しっかり納得してもらえる政策でないと進展しないという現状がある。この辺りをどう考えているのだろうか。
「すべての高齢者の方に納得してもらうのは難しいと思っています。ただ、社会保険料を支払い、社会を担っている現役世代がつぶれてしまったら、高齢者を含むすべての国民が困ることになりますよね。年金については『どうせもらえないから』と、納付しない人もいます。そういう人が増えて年金制度が破綻したら、高齢者も困ってしまうと思います。
それにお子さん、お孫さんが過大な社会保険料に苦しんでいる実態を知ったら、なんとかしたいと思われる高齢者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。きちんと話せばわかっていただけると思っています。
私たちの活動は、けして現役世代のためだけではなく、高齢者を含み、未来を見据えた社会全体のための政策提言だということを伝えていきたいです。高齢者の方にも『社会保険料引き下げを実現する会』の中心メンバーになっていただけたら、より深みのある提言ができるとも思っています」
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 金子弥生
撮影/村上庄吾