社会保険料を次の選挙の争点に 

高すぎる社会保険料は、次の参院選での争点になる可能性もあるのだろうか。

「争点にすることがひとつの課題でもあります。そもそも『社会保険料引き下げを実現する会』は、独自法案を出す、政党になるといったことではなく、社会保険料の引き下げに共感する候補者や、政策を実現しようとする政党の応援をするための団体です。

そのため、まずは提言を各政党に持参する、支援する候補者をみつけるといった活動が必要だと感じています。現状の勢力図を見ると、維新、国民民主党が社会保障制度に言及していますが、立憲民主党、自民党はまだ温度差があると感じます。社会保険料の引き下げは現役世代・若者世代向けの政策なので、これまで王道だった高齢者向けの選挙を変えていきたいという思いもあります」

社会保険料の負担感は年々増しているが、音喜多氏が考える問題点はどこにあるのだろう。

「まず、昭和の時代につくられた古い仕組みをそのまま使い続けているということが最大の問題です。例えば年金制度は、賦課方式といって、現役世代から年金世代へいわゆる“仕送り”をする形式ですよね。

制度がつくられた当時は、子どもや若者が多く高齢者が少ない、かつ平均寿命が60代という時代でうまく回っていたんです。それが現在では少子高齢化が進み高齢化率は30%になる勢いで、しかもこれがさらに加速していきます。そして平均寿命は80歳を超えています。

どう考えても現役世代が支え続ける仕組みは持続可能ではありません。現在の高齢者と比較して、現役世代は年金受給額の面で数千万円の損失を被るという試算もあります」

年金制度についてはたびたび議論になっているが、一向に変わる気配がないのは「根本からの見直しが必要なため、着手が難しい」からだという。

では社会保険料の中でも比重の大きい健康保険の方はどうだろうか。

「こちらの方がまだ改革を進めやすいかもしれませんね。歴史を振り返ってみると、高度経済成長期の1970年代、自民党が福祉の一環として、高齢者医療を無料にするというバラマキを行なってしまいました。50年以上が過ぎ、時代は大きく変わったというのに、それを1割負担(一定以上の所得がある人は2割負担)までしか戻せていません。その結果、後期高齢者の医療費は現在18兆円にも及んでいます。

そのうち、5割は税金で負担し、4割は現役世代が納めた保険料から流用しているんです。高齢者本人はたった1割しか負担していません。これはどう考えてもおかしいですよね」

後期高齢者医療制度の問題点を語る音喜多氏
後期高齢者医療制度の問題点を語る音喜多氏

たしかに、現役世代は3割負担である。より多くの医療費を使う高齢者が1割で済むというのは保険の仕組みとしてもいびつに感じる。その上、現役世代は高齢者に“仕送り”までしていたというわけだ。

「さらに、医療費をたくさん支払ったときに適用される高額療養費制度というものがあります。どんなに医療費を支払っても(所得に応じて)定額の自己負担で済むというシステムなのですが、これも高齢者の方が優遇されています。現役に比べて少ない額で済むのです。

なのに、今度また働く現役世代を狙い撃ちして負担の上限を引き上げることが決定し、人によっては月約44万円払うことになりました。厳しすぎです。それに対して、一定の条件を満たした70歳以上の高齢者は月8000円でどんな高額医療も受けられる。もはや保険の原理からも逸脱してますよね」