男は四大・女は短大
当時、男女で学歴に対する価値観はだいぶ違ったという事情もありました。
1960年代以降、男性の大学進学率は飛躍的に上昇していきますが、女子の大学進学率の伸びはあまり芳しくありません。1960年時点で男性13.7%に対して女性2.5%、1970年時点で男性27.3%、女性6.5%となっており、かなり差がついていることがわかります。
その原因ですが、当時は今のような男女雇用機会が保障されていたわけではなく、男は学をつけて外で働いて稼ぎ、女は学などつけずすぐに家庭に入って夫を支えるべしという価値観が一般的だったことが大きいでしょう。今ではもうほとんど見られませんが、当時の女性は高校を出て(もしくは専門学校や短大を経由して)事務職(一般職)として会社に入り、そこで出会った総合職男性と結婚し、寿退社をして専業主婦になるというのがお決まりのコースでした(私の両親もそのパターンです)。
昭和は「女が大学なんて行ったらお嫁に行けなくなる」といった主張も根強く、勉強熱心な女子たちが親の意向で大学に進学できないという事例が全国至るところで見られました。
そのため、当時は地域トップ高校を出た女子生徒が大学に進学せずそのまま働きに出たり、短大に進学するケースも多く見られたのです。
女子学生の就職は四大よりも短大の方が良いとすら言われており、優秀な女子たちがあえて短大に進学することも多かったといいます。
どうせ四大卒の女子学生を雇っても、3年程度働いたら結婚と同時に辞められるのだから、2年長く働ける短大卒の方が仕事の教え甲斐があるし戦力にもなるという見方もあり、企業側も女子生徒は四大卒よりも短大卒から多く採用するといった事情もありました。
そのため、学歴家系図を検証する際は、この点に注意する必要があります。
高学歴の人が、「うちの母親は高卒なんだけど……」などと言っているケースをよく見ますが、実はその母親は大学には行っていないものの県トップの公立校を出ていたというケースは意外と多いのです。
今の50代以上の女性の実力を図るには、「最終学歴」よりも「高校のレベル」の方が適切であると言えるでしょう。
文/じゅそうけん