「……いま、女の子と付き合ってるんですよ」
まずは金銭的な動機で風俗の仕事を始め、そこでの行為にそれほど抵抗がないことに気づく。そのため無感覚で続けているうちに、徐々に「自分が必要とされている」との、承認欲求を満たす感情が侵食してきたのだろう。
大学3年の半ばからは、教員資格を取るための教育実習を受け、続いて就職活動に忙殺されて風俗の仕事を控えていたカオルは、就職が決まった大学4年の夏からオナクラで働くようになる。そこは個室内での〝手コキ〟によって、男性を射精に導く風俗店である。やはり彼女が〝気楽な仕事〟として選ぶのは風俗業だった。
そして大学卒業の直前である2月から、「SMに興味があって、いじめられるとどういう感じかなって思ったんです」と、処女でSMクラブでの仕事に至ったというのが、私がそれまでに表に出していた内容である。
だが、ここでも彼女について伏せている事柄があった。この件での取材が終わり、雑談になったところで、「なんか私、男の人に興奮しないんですよね」と口にした彼女が、言いにくそうにあることを切り出したのだ。
「……いま、女の子と付き合ってるんですよ」
予想もしない発言に驚いて相槌だけを打つと、カオルは続けた。
「だから、もとからそんなに、男の人に対して性的に興奮したりしないのかもしれないですね」
写真/shutterstock