「まるっきり承認欲求なんでしょうね」

ピンサロを辞めた彼女が次のバイトとして選択したのは、またもや風俗の仕事だった。「ふつうのバイトは時給が安くて働く気にはなれなくて……。それでデリヘルの面接を受けたんですけど、仕事内容を聞くと、〝素股〟が入るだけでピンサロと変わらない。それならやれると思って働くことにしました」

〝素股〟とは、本番行為の体位になり、ローションをつけた手で男性器を握って射精させるプレイである。ただし、デリヘルの仕事というのは、従業員が監視をしているピンサロとは違い、客の男性と密室で2人きりになってしまう。そこでは、客からの本番強要が頻繁にあると聞いている。

「そういうときは『ダメです』って断ってました。何度も言ってくる人には『本当にダメなんですよ』って、強い口調で返してました」

ある意味、性行為にこだわりのないカオルが、なぜ処女ということにこだわったのか。その質問に彼女は即答した。

「こんなとこで処女を捨てるのはヤバイと思ってました。好きな人が……できるかどうかわかんないけど、とりあえず今ではないって。やっぱ、入れたくないんですよね……」

さらにカオルは付け加える。

「私ってそういう場所(風俗)に慣れてない感じがウリになってるじゃないですか。清純派というか……。そのイメージが、1回でも(セックスを)やると、剝がれそうだし……。余分におカネ出すからって人もいましたけど、おカネでは揺るがなかったですね。私のなかでは処女が大切なものっていう認識があるのかな?なんかおカネで売るというのも値段をつけるみたいで抵抗があったんです」

だが、そんな言葉の反面、「10万って言われたら悩むなあ……でも、自分が納得する人のときに、とっておいたほうがいいかな」と揺れ動く心境も見せた。

彼女はそのデリヘルを1年で辞めた。理由は50代後半の客に、専属の愛人にならないかと誘われたからだ。

「こんな清純そうな人が風俗に?」性行為にこだわりのない風俗嬢が処女にこだわる理由…カラダを求められることで満たされる承認欲求_2

「1回3万円くらいで会うようになりました。最初の約束で本番はなかったんですけど、やっぱり途中から求められるようになってきましたね。もちろん拒んでました。そうしたら、2か月くらいして、『妻にバレた』と連絡が来て終わりました」

そろそろ大学3年という時期に、カオルは性病になることが怖くなり、風俗からは一旦距離を置く。その際にガールズバーで働くことにしたのだが、やはり男性との会話が苦手で、3か月と持たなかった。

学校でも数回、合コンに誘われる機会はあったが、「私自身、男の人と一緒に過ごして、そんなに楽しいとは思えなかった」と、異性とうまく付き合えないことを明かしている。そしてカオルは自嘲気味に呟く。

「気持ち的に、男の人に恋愛感情を抱くのは難しいかなって思います」

だがその反面、男性との〝カラダ〟の接触については、それほど抵抗がない。

「体を触られたりとかキスだとか、あんまり嫌じゃないんです。人に尽くすのが好きというか、相手が興奮してくれるんなら、私にも存在意義がある、みたいな……。それって、まるっきり承認欲求なんでしょうね」