今も続く醜悪な“エコシステム”
大阪市西区の歓楽街「松島新地」を騒然とした空気が包んだのは今年10月14日のこと。この日の深夜、大阪府警の捜査員が新地の一角にある料亭5店舗に一斉に踏み込んだ。
この捕り物の翌日、府警は奥田千城容疑者(31)ら男女4人を売春防止法違反(周旋)の疑いで逮捕したことを発表した。在阪メディアの報道によると、逮捕された奥田容疑者は大阪・ミナミのホストクラブの経営に携わっていた。
さらに府警は11月5日、奥田千城容疑者を売春防止法違反(場所提供業)の疑いで再逮捕している。
「わっしょいわっしょいわっしょい」
ホストクラブが運営するSNSアカウントに投稿された動画には、ペンライトを手にしたホストたちによる「オールコール」が響き渡る店内の様子が映し出されていた。
華やかなルックスのホストたちが、女性らを誘うような視線を投げかけている。
奥田容疑者は、この「男の園」に誘い込んだ女性たちを搾取するための実に醜悪なエコシステムを作り上げていたとみられている。
「奥田容疑者の『家業』は、松島新地の料亭でした。料亭といっても、実態は売春小屋。
奥田容疑者は、自身のホストクラブに来た女性客に、ホストへの『売掛』と呼ばれる借金を背負わせ、『借金返済のため』と言いふくめ新地に送り込んでいた。そこで男性客の相手をさせて対価を得ていたのです。
奥田容疑者は祖母と母とともにこうした料亭を5店舗運営していました。いわば親子3代で売春斡旋を生業にしていた格好です」(在阪の全国紙社会部記者)
ホストクラブでの「売掛」をめぐり、客の女性が売春や売春類似行為を強要される被害は全国で相次いでおり、社会問題化している。今回の逮捕劇の背景にも、そうした社会情勢があるとみられるが、そもそも松島新地とはどんなところなのか。
「昭和レトロな長屋風の建物が軒を連ねる街は、かつては遊郭として賑わい、1956年の売春防止法制定までは『赤線(売春公認)地域』とされてきました。
その後は、警察当局の摘発を免れるために、多くの店が料亭として営業許可を取得しています。
料亭で『給仕』として働く女性が客と恋愛関係になり、本番行為に及ぶ。表向きは、『給仕と客との自由恋愛に店は関知しない』ということになっていますが、実際は売春行為を正当化するための方便にすぎません」(地元関係者)