「“高くてもいいもの”はいいから買う価値がある」という考え方
物価高の時代でも高級志向があるのは、重盛氏いわく「現在は『安くないと売れない時代』ではないから」だという。
「中流層であってもさまざまな商品の値上がりに対して、納得して受け止めている方々も少なくありません。
それは値上げ理由が消費者に対してきちんと発信されているためでしょう。
極端な例になりますが、バブル期は品質に関わらず『高ければいい商品』といった考えが刷り込まれていました。
しかし、今は商品の情報を正確にキャッチでき、消費者の選択眼が磨かれているので、消費者も値段にとらわれず『高くてもよくないものがある』ことを知っています。
だからこそ逆に『“高くてもいいもの”はいいから買う価値がある』と考え、高額な品でも納得すれば購入する時代になっているのです」
それが物価高で節約志向が浸透している時代でも、高級志向が残っている理由ということか。
「『自分へのご褒美』などの高級志向は今後も存在し、節約志向と両立していく家庭もあります。
それはお金を抑えるところは抑えるものの、価値あるものに対しては使うときは使う、という意識が定着してきており、シティホテルの高級クリスマスケーキなどは金額に見合った価値があると考える人が中流層にもいるからでしょう」
「クリスマスケーキに3万円」という値段だけ聞くと驚いてしまうが、1年に1度の贅沢な価値ある時間を含めて買っていると考えると、案外妥当なのかもしれない。
物価高の時代でも選択眼の磨かれた消費者たちは、今後もプレミアムな商品と共存していくのだろう。
取材・文/十六夜瑠奈(A4studio)