「Aさんは交際関係に支障をきたし、結婚に興味を失った」

こうした被告側の主張を、細谷裁判長は懲役9年という実刑判決で一蹴した。争点となった「障害を負わせたかどうか」については検察側の全治約一週間のけがを負わせたとする起訴内容を認定。

「Aさんが抗拒不能だったか」「それを認識していたか」については、「仕事のストレスで認知に歪みが生じた」とした被告側の主張を「その後も問題なく執務に当たり、校長にまでなっており、認知能力に歪みがあったとはいえない。被告の供述は信用できない」などと断罪。

犯行時に抵抗できなかったAさんについては「Aさんは中学入学当初から偏差値の高いトップ高に進学したい旨を明かしており、明確な拒否の態度をとることは困難だった」「被告に恋愛感情を抱いていると思い込む理由として理解できるものではありません」「Aさんは交際関係に支障をきたし、結婚に興味を失ったなどの影響が残っている」と慮った。

東京地裁(撮影/集英社オンライン)
東京地裁(撮影/集英社オンライン)
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 判決公判では最後に、「AさんBさんはもちろんのこと、ご両親、当時同じ学校に通っていた他の生徒や保護者や地域は、この事件を知って学校に対する不信を抱き、社会の多くの人々にも影響を及ぼしています」「反省を深め、確実に更生してほしい」など裁判員からの意見も読み上げられた。

その声は、決して取返しはつかない罪を犯した彼の胸に届くだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班