「視聴者と人生を共にしている」
磯野貴理子は二度の結婚・離婚に加え、脳梗塞で倒れたこともある。
松居直美も結婚・出産・離婚、森尾由美も出産・アメリカ生活・孫誕生などを経ており、3人のほぼすべてのライフイベントがこの番組とともにある。
視聴者は彼女たちとともに歳をとり、彼女たちの人生を見ながら、まるで親戚の会話を聞くように番組を楽しむ。
同じフジテレビの長寿番組でも画面の向こうの『サザエさん』は歳を取らないが、『早く起きた朝は…』は画面の向こうも歳を重ねていく。
この「視聴者と人生を共にしている」感覚こそが、この番組が長い間根強いファンに支持されている由縁ではないかと思う。
元来フジテレビには『めちゃイケ』など、バラエティの体裁でレギュラーメンバーの人生の岐路・葛藤を見せていく伝統があるが、『はやく起きた朝は…』はそういったイベントを過度に脚色せず、あくまで3人のトークの中で消化していく。
例えば、5年前に大いに話題になった磯野貴理子2度目の離婚告白の回。
なんてことのないトークの流れで突然「急なんだけどさあ、あたしさ、離婚することになって」「えっ?誰が?」「あたしあたし」と切り出す貴理子。
号泣する直美に「やめてやめて、泣かないで。悲しくない全然大丈夫」とフォローした後、24歳下の夫に「自分の子供が欲しい」と言われたことを告白という流れであった。
なかなか衝撃的な告白である。
ゴールデンのテレビ番組ならCMを何度もまたいで話すような内容かもしれない。しかしこのトークはわずか2分である。
だがトークそのものは2分であっても、これまで築いてきた何十年もの蓄積があるからこそ、視聴者はなんでもないよと気丈に振舞う貴理子の気持ちも、手で顔を覆い号泣する直美の気持ちも、そしてあえて言葉を挟まない森尾由美の気持ちもよくわかる。
貴理子がこの回で「ずっと見てくれている方にさ、報告をね。急に旦那の話しなくなるのも変だからさ」と話したように、3人は視聴者にトークを通じて人生を見せていく。
そういう番組なのである。