「みんな詐欺のことは知らなかった」
Gさん これからどうしていくつもりなんですか。
父親 どうしていくったって……じっと我慢していくしかねえんだ。
Gさん 本人は会社で働いてると言ってたんですか。
父親 そうそう。たまにしか顔出さなかったけど。みんな(江尻容疑者が詐欺をやってるとは)知らなかった。名古屋の中警察の刑事が家に来て、それで知って驚いてんだ。
Gさん 一度伺わせてもらうときがありましたら、また連絡して行きますので。正式に謝罪とかは考えてないですかね。
父親 ただ謝るだけだね。ほんと申し訳ないと思うだけ。
Gさん 舟一からは親戚に借りたお金があるということも聞いていました。その借金はまだ残ってるんですかね。
父親 もうしっちゃかめっちゃかで、どうしようもない。俺も死にてえほうだ。
Gさん いやいや、私が死にたいです。子どもがいるから死ねないだけです…。
Gさんは他の被害者女性5名とグループLINEで繋がっており、被害者たちの思いを背負って連絡をしていた。この電話のやり取りの印象についてこう話す。
「私自身、ご高齢の江尻の父親を追い詰めたかったわけではありません。だけど、おそらく私たちが渡したお金であろう江尻からの仕送りの総額や、その使い道はどうだったか、もっとしっかり説明してほしかったです。
江尻の代わりに返せとも言えませんが、どこにもぶつけられない思いを父親としてどう考えているかを聞きたかった。でもその反応は決して誠意あるものと思えませんでした。私たちが実家に伺いたい旨を、せめて受け入れてほしかったです……」
音声には「すみません」「申し訳ない」とは口にするものの、どこかのらりくらりとした応答を繰り返す江尻容疑者の父親の声が入っていた。あくまで詐欺を行なったのは江尻容疑者本人で、親に責任を問うのは酷ではあるが、被害女性たちの怒りは収まりそうにない。
取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班