民主党が軽視したイスラム票
アメリカのテレビメディアも、開票日には日本と同様に「開票速報」番組を長時間組んでいて、正確性、速報性を競うのが習わしとなっている。
5日の夜はCBSの特番を見続けていたが、出口調査なるものをこちらでも実施しており、ミシガン州やペンシルベニア州といった激戦州の出口調査で、カマラ・ハリスがトランプをリードしていると報じていた。
その時まではまだ大接戦モードだった(結果的に外れていた)。そのこともあって僕は一瞬、アメリカという国も、いくら何でもトランプを再び勝たせることに逡巡している動きが出てきたのかと一喜一憂していた。
ところが、である。なかなか途中経過が出てこない。そうしたなかでNYタイムズが「トランプ陣営が93%の確率で勝利する」との見通しをオンラインで速報してきたのが日付が変わって6日の午前1時39分。
僕はそれまで疲れから一瞬眠りにおちてしまっていた。はっと気づいてテレビを観ると、何とちょうどトランプが滞在先のフロリダ州ウエストパームビーチで支持者らを前に「勝利演説」を始めたのだった。それが午前2時20分頃。
すべての激戦州をトランプが制すことが確実になり、過半数270人の選挙人を確保できる見通しがついたことからの「勝利宣言」だった。
トランプ・ファミリーを真ん中に、横一列で壇上にあがった面々の(40人ほど)光景が忘れられない。そこには黒人やアジア人はひとりもいなかった。
ある意味、このシーンこそ、とても象徴的な光景だった。勝った彼らはどのような人たちなのかを最も端的に示していた。朝5時半までには、ほとんどのメディアがトランプ勝利を報じた。ああ、終わったな。何だか体からチカラが抜けるような感覚になって再び眠りにおちてしまった。
朝8時からの「DemocracyNOW!」をみる。トランプ当選を受けて結果の分析をゲストと共に行なっていた。「アメリカの暗黒の一日だ」「南部連合(confederacy)の勝利だ」など、トランプに対して批判的な学者ら(ラルフ・ネーダーもいた)の解説が続いた。
注目したのは、ミシガン州ディアボーン在住の活動家でパレスチナ系アメリカ人リンダ・サースー氏の見方を紹介していた点だ。今回の選挙で、カマラ・ハリスの民主党は文字通り、イスラム票の動向を全く無視した、と。自陣営に取り込もうとさえしなかった、と。
トランプのほうが活発にイスラム社会に接触をしてきたとリンダ・サースー氏は続ける。その結果、ディアボーンでは、投票のかなりの部分(18%)が第3の候補であるみどりの党のジル・スタイン候補に流れた。
自分が23年間、関わってきた選挙運動のなかで今回が最低のものだったと激しく批判していた。こんな独立系の番組がまだあることが救いだ。