1日に2人、逮捕・収監されるパレスチナの子どもたち

——イスラエル軍に対して抗議の投石をしたヨルダン川西岸、パレスチナ自治区に住む子どもたちが年間700人、つまり「1日に2人」の頻度で逮捕・収監されていることを初めて知りました。この状態は今現在も続いているのでしょうか。

イスラエル人の映画監督デヴィッド・ヴァクスマン氏(左)と映画プロデューサーで人権活動家のパレスチナ人、モハマド・ババイ氏
イスラエル人の映画監督デヴィッド・ヴァクスマン氏(左)と映画プロデューサーで人権活動家のパレスチナ人、モハマド・ババイ氏
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デヴィッド・ヴァクスマン その通りです。特に昨年10月7日以降はその数はさらに増えており、ガザ地域も入れると年間2000人の子どもたちが投獄されています。私がこの映画の撮影を始めたのは約8年前。長年パレスチナの子どもたちをサポートしている弁護士の方に、テルアビブにある軍事裁判所で何が起きているのかを見てほしいと誘われて行ったのがきっかけです。

まだ幼い10代前半の少年たちが、手足を拘束されて、弁護士すらつけてもらえず7時間から10時間にもわたる厳しい尋問を受けていることに大変ショックを受けました。その後、入手先は言えませんが裁判所の尋問の映像を入手し、そこに映っている少年たちを何年もかけて探しだし、説得し、インタビューをしたのです。

イスラエル軍に逮捕された少年たちは手足を拘束され軍事裁判にかけられる(『Two Kids a Day』)
イスラエル軍に逮捕された少年たちは手足を拘束され軍事裁判にかけられる(『Two Kids a Day』)

——映画は、当時の厳しい尋問の映像を、今は成長した青年4人が振り返り語る内容になっています。そのうちひとりは1年、2人は2年半、あと1人は4年も収監されていたということに驚かされました。

モハマド・ババイ 西岸地区のパレスチナ人に対しては、イスラエルの通常の法律ではなく軍法が適用されます。通常、イスラエルで少年が同じ状況になっても、すぐに弁護士がつけられますが、西岸地区ではまったく違う。たとえ弁護士を雇うことはできても、それが3日後、5日後、時に数週間かかることもあります。

実際、パレスチナ人の裁判に弁護士など必要なく、ほとんど見世物のようなものです。これは占領でありアパルトヘイトであり、彼らはやりたいことを何でもできるのです。そして誰もそれを非難しない。

それでも、逮捕され収監された子どもたちは幸運だったのです。刑務所に入るだけで済んだのですから。同世代の何十人もの子どもたちが投石をしてイスラエル兵に射殺されているからです。

デヴィッド そもそも、考えてみてください。彼らがイスラエル軍に石を投げたとしても、戦車や軍用車の中にいるイスラエル軍にとって、それがどのくらいの被害か。危険などほとんどないのです。それなのにここまでの弾圧があるのは、石を投げるという行為が、彼らにとって攻撃というよりも抵抗の象徴だからです。

だからこそ、イスラエル側もそれに対して厳しい弾圧を行う。この見せしめもまた、ひとつの象徴的行為なのです。

モハマド 投石は、パレスチナの人々にとっていつも、抵抗の象徴です。1987年に起こった第一次インティファーダ(パレスチナ解放を求める民衆蜂起)のはじまりもそうでした。私はまだ10歳の子どもでしたがよくそれを覚えています。しかし象徴だけではなく、現実的にも、私たちには投石をするぐらいしか抵抗の手段がなかったのです。

今はパレスチナの人たちも多少なりとも武器を持って戦うようになりましたが、イスラエルの圧倒的な軍事力に比べればそれはほとんど何もないに等しいというのが現実です。