大江裕が心に決める“3人の師匠”の存在
――デビュー16年目を迎えて、大江さんはご自身のことを「若手」と「ベテラン」どちらだと思いますか?
ベテランではないですし、「中堅」でもない気がしますね……。私としては、まだまだ若手の一員に入れていただきたいなと。
今後20〜30年とキャリアを重ねたら、また立場は変わってくるのでしょうけれど、今は若手歌手の皆さんと一緒に演歌を盛り上げていきたいと思っています。もちろん、大御所の先輩方とご一緒するのも楽しいのですが。
若い歌手のなかには、コロナ禍でデビューした方々もたくさんいます。CDを売ることも難しく、歌も披露できず、とても辛かったでしょう。そうした逆境を、一緒に乗り越えていきたい。
それに、若い世代と一緒にやるのは、やっぱり楽しいんです。僕は後輩としてもツッコミやすい性格のようで、「大江さん、それ違いますよ!」「はい!」って(笑)。
――そうした後輩の皆様には、どのように接しているのでしょう?
後輩たちにいつも言っているのは、「先輩と呼ばないでください」ということです。「先輩」と呼ばれたら、それ以降、僕は喋らなくなっちゃいます(笑)。
だって、先にデビューしただけであって、偉くもないですし、ステージに立てば年齢は関係ないんですよ。
昔、北島先生が言ってくださったんです。「CDの価格を考えてみなさい。60年以上活動している歌手でも、今日デビューした新人でも、CDは同じ1500円。お客さんから見たら同じ演歌歌手で、歴が長いからすごいとかは、本当に関係ないんだ」って。
だから、僕は先輩方はもちろん、新人さんにも、敬語を使うように気をつけています。
――大江さんは昨年、北島音楽事務所を退所されました。その後も北島先生とは、定期的にお会いしているのでしょうか?
はい、今月も会いました。北島先生は、本当にすごいお方ですよ。僕に会うと、必ず「裕、元気でやっているか」とパッと声を掛けてくださる。
普通なら、こちらから「お身体、大丈夫ですか? しんどくないですか?」と言うじゃないですか。でも北島先生は、絶対に先にこちらを心配してくださるんです。
――改めて、大江さんにとって北島先生はどのような存在ですか?
「僕の人生」といえる存在です。こうしてインタビューしていただけるのも、コンサートで全国の皆様にお会いできるのも、すべて北島先生のおかげ。だって、北島先生がいなければ、私は演歌歌手になっていないわけですから。
それに、北海道の最北端でも、沖縄の宮古島でも、日本中どこに行っても「サブちゃんの弟子だね。先生は元気?」と皆様が声を掛けてくださる。
なので、私としては今後の人生も、僭越ながら「北島三郎」の名を背負って歩いていきたいなと思っています。
ちなみに、僕の中で、演歌界の師匠は北島先生。お笑いの師匠は、明石家さんまさん。人生相談は、安住紳一郎さんと心に決めているんですよ。