背景映像の基本は「歌う人の邪魔をしない」
––カラオケの映像には、公園デートをするファッションが少し古めのカップル、フェンスや壁に寄りかかる男性、花や砂時計のモチーフなど、いくつかの「あるある」が存在しますよね。これはなぜなのでしょうか?
おっしゃっているのは、カラオケの「背景映像」と呼ばれる映像のことですね。背景映像には制作上の制約がいくつかあって、それらをクリアしたうえで制作すると、どうしても似た雰囲気のものが生まれやすくなってしまうんです。
少し前のファッションやメイクが登場するのは、カラオケ機器のライフサイクルが理由の一つ。いったんカラオケ機器に搭載された背景映像は、その機器を入れ替えるまでずっと流れます。
現在のカラオケボックスでは数年で最新機種に入れ替えていますが、スナックなどでは昔の機種がそのまま使われていることもよくあります。そうすると、10年くらい前に撮影された映像が流れることもあるんです。
––映像を制作するうえでの「制約」とは、具体的にどういうものですか?
基本的に、映像は背景であり、歌っているお客様の邪魔をしてはいけない。そのため、あまり激しく光が明滅するのもダメですし、歌詞以外の文字が入るなど情報量が多すぎるのもNG。映像が切り替わりすぎるのもよくないですし、逆にずっと同じカットが続くのもよくない。過度にダイナミックな映像もダメですね。たとえば、火山が噴火しているとか。
あとは、さきほどお話ししたように10年くらいは使われる映像なので、なるべく時代を特定できるものは映さないようにしています。たとえば最近はスマートフォンが出てくる映像もあるのですが、機種は特定できないようにしています。
こうした制約を守りながら作っていると、どうしても似た映像が多くなってきてしまうんです。