男に甘えた経験がない?
――桑田佳祐さんが作詞作曲をした『ブッダのように私は死んだ』に続く、新曲『酔中花』が、カラオケ2社の月間演歌・歌謡ランキングでトップ10入りです。
そうなんですよ。他は全て昭和の名曲……私が憧れてやまない、石川さゆりさんの『津軽海峡・冬景色』『天城越え』、美空ひばり大先輩の『川の流れのように』『愛燦燦』、テレサ・テンさんの『時の流れに身をまかせ』『つぐない』……他にも、みなさんが口ずさめる名曲ばかりで。いったい、どうしちゃったんでしょう!?
――いや、それは、こちらがお訊きしたいことで。
ですよね、ごめんなさい(苦笑)。
たしかに、これまでの私の曲は「カラオケで歌うには難しい」というお声が多くて。それに比べて今回の『酔中花』は「歌いたくなる曲ですよね」と言ってくださる方が、ものすごく多いんですけど……それにしても……ですよね。う〜ん、なぜ、でしょう?
――坂本冬美さんご自身にも、わからない?
これまでは、ポップス系の歌を出したら、次は路線を変えて……「おぉ、そうきたか!」と言っていただけるような方向でやってきたんですけど、今回は、桑田佳祐さんが指し示してくれた新しい道……“演じるように歌う”という流れを堰き止めるんじゃなく、繋げていきたいという強い思いが私にあって。
――周囲もその坂本さんの思いに乗っかった!?
乗っかったというより、スタッフは、みんな同じ気持ちでいてくれました。詞を書いてくださった吉田旺先生と、凛とした中にも儚く健気な女性を思わせる素敵な曲を作ってくださった徳久広司先生も、そんな私の想いを汲み取ってくださって。その結果が、カラオケランキングに結びついたんだと思います。
――トップ10入りを知ったときの素直なお気持ちは?
最初に聞いた瞬間は、「ウソッ!?」と叫びながら、5mほど後ろに飛び退きそうになりました(苦笑)。それから、じわじわと喜びが込み上げてきて、その場に誰もいなかったら、“わ〜〜〜〜〜い”と叫んでいたかもしれません(笑)。
――新曲『酔中花』は、冬美さんにとっても歌いやすい曲でしたか。
それがですねぇ、確かに、音域はそれほど広くないですし、メロディも覚えやすいし、歌いやすいのは確かなんですが……。
――主人公の女性を演じるのが難しい?
そうなんです! レコーディングのときも、徳久先生が、「ちょっと鼻にかけて、男の人に甘える感じで」とおっしゃるんですけど、これまでの私の人生で男の人に甘えたという経験が、1ミリも、微塵も、欠片もなくて(苦笑)。もう、難行苦行の連続です。
特に、最後の“す・い・ち・ゅ・う・か”の、“か”が、何度歌っても、先生がおっしゃる「どこか甘えたような“か”」というのが上手く表現できなくて。もう、何度録り直しをしたことか。
――聞くときも、カラオケで歌うときも、“す・い・ち・ゅ・う・か”の“か”に、注意ですね。
はい! 間違っても私のように、女々しい“か”じゃなく、甘えるような鼻にかかった、“か”で、歌ってみてください。