多額の納入金・納付金

大阪IRは開業3年目で国内約1358万人、海外約629万人、合計約1987万人の来訪者を見込んでいる。このうち、カジノへの来訪者を約1610万人としている。大阪IRに来た人々の約81%がカジノに足を運ぶ計算だ。

これらの数字から、開業3年目での年間売上高を約5200億円、当期純利益を約850億円とはじく。売上高の内訳はカジノが約4200億円で8割ほど、高級ホテルの売上など非カジノは約1000億円とした。

府市に入るお金は、年間約1060億円を見込む。カジノでは日本人や日本在住の外国人から1回あたり6000円の入場料を取る。半分は国に回り、半分が府市に入る。その入場料納入金が約320億円。カジノ収益の一部からなる納付金約740億円と合算すると約1060億円となり、それを府市で折半する。

府市は、この収入の一部をIR内に還元していく。インフラの維持管理(年間約4億円)や消防力の強化(同約4億円)にとどまらない。ギャンブル依存症対策の充実・強化(同約14億円)や、夢洲に新設する警察施設の設置・維持、防犯環境の整備やパトロールの強化(同約33億円)にも使う。

整備計画通りだと、大阪市には年間530億円が入る。同市が2023年6月にまとめた「財政のあらまし」によると、同年度会計予算では、法人市民税が1165億円。その半分弱が、一気に増える計算となる。

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ただし繰り返すが、このお金はカジノ客の負けが支える。博打ですったお金で財政を豊かにすることを、どう考えるか。カジノ・IRに対する賛成と反対が分かれる1つのポイントになっている。

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図/書籍『カジノ列島ニッポン』より

カジノ列島ニッポン
高野 真吾
カジノ列島ニッポン
2024年9月17日発売
1,100円(税込)
新書判/240ページ
ISBN: 978-4-08-721333-1

2030年秋、大阪の万博跡地でカジノを含む統合型リゾート (IR) の開業が予定されている。
初期投資額だけでも1兆円を超える、この超巨大プロジェクトは年間来場者数約2000万人、売り上げは約5200億円もの数字を見込んでいる。
カジノ・IRに関しては大阪のほか、市長選の結果により撤退した横浜をはじめ、長崎、和歌山でも開設の動きがあり、そして本丸は東京と見られている。
20代から海外にわたってカジノを経験してきたジャーナリストが、国内外での取材を踏まえ、現在進行形の「カジノ列島ニッポン」に警鐘を鳴らす。

◆目次◆
第一章 消えぬ「東京カジノ構想」の現場を歩く
第二章 海外から探るIRの真の姿
第三章 先行地・大阪の計画とは
第四章 不認定の長崎、こけた和歌山・横浜
第五章 ギャンブル依存症をどう捉えるか
第六章 国際観光拠点VS地域崩壊

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