華やかな雰囲気はまるで『キングスマン』!
5月初旬、京都のアップリンクで『男たちの挽歌』(1986)を見た。
お札に火をつけて煙草を燻らすチョウ・ユンファの顔がデカデカと写されたポスターには、「日本公開35周年記念」の文字が。
2001年生まれの自分は、この作品はもちろん“香港ノワール”というジャンルがあることもそのとき初めて知った。ジャッキー・チェンをはじめとするカンフー映画やコメディ映画が主流であった1980年代の香港で、夜間のロケーションを多用したコントラストの強い色調など、前衛的な手法で“マフィア映画”として公開され、大ヒットしたという。
イギリス領時代の香港を舞台にしているためか、ところどころに華やかな雰囲気を感じた。のちの映画でいえばまるで『キングスマン』(2014)のよう。
主要な登場人物は、香港マフィアのホー(ティ・ロン)とその相棒マーク(チョウ・ユンファ)、ホーの弟で兄の仕事を知らないまま警察官になったキット(レスリー・チャン)。
ホーは弟のためにマフィア業から足を洗おうとするが「入るのは楽だが抜けるのは難しい」マフィアの世界、いつしか争いに巻き込まれてしまう。
正直マフィア映画はこれまであまり触れてこなかったジャンルなので、暑苦しいド派手なアクションシーンばかりなのかと思っていた。ところが、兄弟のすれ違いや彼らを取り巻く人間模様が丁寧に描かれていたし、ロケーションを取ってみても暗いばかりでなく、綺麗なオフィスや、キットの彼女ジャッキー(エミリー・チュウ)の趣味がうかがえるファンシーな部屋など、ポップなシーンによってバイオレンスがうまく中和されていて心地よかった。