一人の少女がプロレスの世界へ飛び込む覚悟

「確かに私たちが全女に入った昭和の時代は、入門してくる子は、親との確執とか家庭に何かしらの事情を抱えている子が多かった。

お金を自分で稼ごう、家を助けるために…とかそういう理由でプロレス界に入ってくるくる子が多かったです」

ジャガー自身もそうだった。

「私は4人姉妹なんですが、2歳で両親が別居してすぐ上の姉と二人で母に引き取られて育ちました。それから義理の父に育てられましたが、家は両親が共働きで大変でした。

姉は高校に行きましたが昼も夜も働いている母を見て『私も高校へ行くと家は大変だな』と考えて中学を卒業して女子プロレスラーになろうと決意しました」

そんな覚悟を持った入門は、15歳で自らを「逃げ場がない」状況に追い込んでいたという。

「全女に入ってからは、常に崖っぷちじゃないけど、この世界で生きていくしか逃げられないみたいな覚悟があったと思います。それは、周囲から強制されるものじゃなくて、自分でそういう状況に追い込んでいくものでした。

オーディションで合格してから、やめるにやめられないと思っていたのでハングリーでした。何とかこの世界で生き残る選手にならなきゃと思って強くなろうと必死に練習して負けない体を作りました」

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試合会場では毎日、体育館をうさぎ跳びで一周し腕立て、腹筋、背筋などの基礎トレーニングを毎日、就寝前に100回ずつ課した。

「私はプロレス以外の世界で行くところがなくて逃げ場がない―そう自分でもっていった。器用な人は選べると思いますが私は不器用だから選べなかった。だから今も現役で残っているんだとも思います」

それは、「極悪女王」で登場するダンプ松本も長与千種もライオネス飛鳥も同じで「みんな苦労して這い上がってきました」と思いを寄せる。主役のダンプ松本は、ドラマで描かれているように特に激変したという。

「入門当初のダンプは気が弱くてどちらかというと臆病な子でした。ただ、『ダンプ松本』という名前になって覚醒したんです。すごく実力をつけて成長したと感じました。

極悪同盟になって自分がリーダーとしての自覚が出てめきめきと力をつけました。人は責任を持つと『強くならなければいけない』と意識が変わるんです。そうなると、人気は後からついてきます」