ヒールターンしたら、欲が出てきた

「闇落ちしてよかった」スターライト・キッドが語る“ヒールターン”のすすめ_1
“闇に踊るスカイタイガー”ことスターライト・キッド

痛い。悔しい。勝ちたい――。闘いを通して、感情を表現するのがプロレスラーだ。顔の表情や全身の細かな動きから、わたしたちは彼、彼女らの感情、そして生き様を感じ取る。

では、顔の半分以上がマスクで覆われている覆面レスラーはどうか? 感情もまた覆われてしまうのか? そうとは限らない。感情表現が豊かな覆面レスラーは確かにいる。その代表が、“闇に踊るスカイタイガー”ことスターライト・キッドだ。

2015年10月、キッズレスラーとしてスターダムでデビュー。年齢非公開だが、今年“年齢不詳の新成人”になった。テクニックとスピード、そして生来のプロレス脳を併せ持ち、海外からの評価も高い。

しかし、真面目で控えめな優等生タイプ。正規軍・STARSに所属していた頃は、「“スターダムのアイコン”岩谷麻優の隣にいる人」――そんなイメージが強かった。

それが、2021年6月、正規軍・STARSがヒールユニット・大江戸隊との「全面戦争イリミネーションマッチ」に敗れたことから、大江戸隊に強制加入させられた。闇落ち――いわゆるヒール(悪役)ターンを余儀なくされたのだ。

キッドは変わった。マスク、コスチューム、メイクといった見た目の変化と共に、より自由に、より欲深く、より感情豊かにプロレスをするようになった。相変わらず顔はマスクで覆われ、目と口しか見えない。それでも世界中のプロレスファンを魅了し続ける彼女の魅力とは――。

「闇落ちしてよかった」スターライト・キッドが語る“ヒールターン”のすすめ_2
大江戸隊に移籍したときは「ものすごく悩んだ」と話すキッド

――昨年6月、突如、STARSから大江戸隊に移籍したときは、見ていて本当につらかったです……。ショックを受けたファンは多かったと思いますが、ご自身ではどんな心境でしたか?

STARSが嫌いで抜けたわけじゃなかったから、ものすごく悩んだ。心はSTARSにいるのに、体は大江戸隊みたいな感じだったな。ちゃんと大江戸隊に切り替えるまでに時間がかかった。

――7月、岩谷麻優選手が「1vs5スターライト・キッド奪還マッチ」で大江戸隊全員に勝利しました。でもキッド選手はSTARSに戻ることを拒否しましたね。

大江戸隊でやっていくっていう意志を固めたあとだったんだよね。ちょっと迷ったけど、それでまた戻ったら意味がないというか。やっぱり状況を変えないと、人って変わらないから。自分のために残った。

――個人的には一般人も、時にはヒールターンってしたほうがいいと思っていて。わたしも隙あらば、ヒールターンしようと思ってるんですよ。

アハハハハ! どういうこと!?

――口調とかメイクとかをガラッと変えたら、強く生きられるようになる気がするんですよね。

うんうん。いいきっかけにはなるかもね。

――キッド選手は闇落ちしてよかった?

よかった! STARSの頃には見えなかった部分がいっぱい見え始めた。特に人間の欲深さみたいなものに気づいたというか。