「出社日だったら無理して行かせていたかも」

“仕事と家庭の両立”と言うのは易しいが、行うのは難しい。

2022年度の厚生労働省の調査(※1)によると、2021年の共働き世帯は1247万世帯で、夫婦がいる世帯全体の約7割にあたる。

そんな共働き世帯のサポートには欠かせない保育園だが、体調不良の子どもは受け入れてもらえない。

親たちは子どもの急な体調不良というリスクに、どう対処しているのだろうか。

二児の母である会社員のリンさん(仮名・38)は、「今年に入り、子どもたちが2人とも手足口病にかかってしまった」という。当時の話を聞いた。

都内在住、フルタイムのワーキングマザーであるリンさん
都内在住、フルタイムのワーキングマザーであるリンさん
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“手足口病”とは手足や口に発疹ができる、ウイルス性の感染症のことを指す。主に子どもが感染するが、ときには大人がかかることもあるといわれている。国立感染症研究所によると、今年7月1日から7日までの1週間に全国およそ3000の小児科の医療機関から報告された患者数は3万5960人で、過去10年で最多となる(※2)。

リンさんは自身の子どもが手足口病を発症した経緯を、こう話す。

「週末に6歳の長女が友達と遊び、その子からうつりました。週明けにうっすらポツポツと発疹ができていて、熱は37℃と微熱。たまたま会社は在宅デーだったので、念のために保育園は休ませました。すると夕方には38℃まで熱が上がりましたね」(リンさん、以下同)

感染初日。いわれてみないとわからない程度の発疹だ(写真提供/リンさん、以下同)
感染初日。いわれてみないとわからない程度の発疹だ(写真提供/リンさん、以下同)

「感染2日目は出社日だったのですが、上司に頼んで在宅にさせてもらいました。長女は発疹が服や床に擦れると痛いみたいで、ずっと機嫌が悪かったです。夜には一気に発疹が増えてきました」

感染2日目の夜。一気に発疹が増えてきた
感染2日目の夜。一気に発疹が増えてきた

「感染3日目には口の中にも発疹ができて、食べられるのはアイスやゼリーだけ。水泡がかなり目立ってきました」

感染3日目。口の中にも発疹が
感染3日目。口の中にも発疹が

「感染4日目には水泡は増えなくなり、ピークはすぎた……と一安心していたら、次は8歳の長男に移ってしまったんです。長男は学校を休まなくてはならなくなり、結局2人とも休ませました」

感染4日目は出社日だったので、夫に頼んで在宅に切り替えてもらい、子どもたちを家で見てもらっていたという。リンさん自身は、仕事を引き続きリモートでできなかったのだろうか。

「やっぱり会社にいいにくいですよ。それと、その日は物理的に対応しなきゃいけない業務があったので、出社はマストでした。他の人に代わってもらうわけにはいかなかったですし。あのときは、本気でフルリモートの職場に転職しようかと迷いましたね」

今回の「園児を段ボール箱に入れて隔離」した事件については「子どもの年齢によっては、判断ができない親もいるのかもしれない」という。当時、この園児は0歳7ヶ月だったというが……。

「0歳児は『ここが痛い』といえないから、親は手足口病だとわからずに保育園に預けてしまったのかも。うちの場合は長女が6歳、長男が8歳なので『ここにぶつぶつができて痛いの』ってはっきりいえるからわかりましたけどね」

職場も夫も理解があるリンさんは、比較的恵まれた環境といえる。しかし、そのような環境の親ばかりではない。子どもの看病を押し付け合った経験がある世帯もあるはずだ。

最後に、彼女は「これは炎上するかもしれませんが……」と前置きをして、こう語った。

「手足口病だとわかっていても行かせる、問題のある親もいるでしょうね。ゆるい園なら受け入れてくれるでしょうし。私も長女の症状が出始めた日は在宅デーだったので休ませましたが、出社日だったら無理して行かせていたかもしれません」