高齢者が住む古いマンションを狙った不動産の押し買い

ここ数年で増加傾向にあるのは、金同様に高騰している不動産を狙った押し買いだという。都内の不動産に関する押し買いは、2019年には30件だったが、2023年には122件に増加。そして2024年は8月までに51件起きている。

「特に都心の築30年以上の古いマンションが狙われることが多いです。品川区、港区、世田谷区などの古いマンションに住んでいる高齢者のもとを訪れ、『マンションの老朽化が進み、価値が下がっていく』『老朽化によるマンション全体の大改修で、負担金として住民も100万円以上払うことになるから、そうなる前に売ったほうがいい』などと持ちかけて不安にさせ、相場の半分ほどの値段で買い取っています。

ひどい場合は、相場4000万円のマンションを2000万円で買い取り、リースバックとして売った人がそのまま住む際には、4000万円の価格から算出した家賃を払わせるなどのケースもあります」(同前)

リースバックとは、自宅を業者に売った後、その業者から自宅を借りて、そのまま住み続けられるという仕組みだ。適正な買い取り価格と家賃であれば、手元にまとまったお金ができるというメリットはあるが、悪質業者は、自宅を安く買い叩いたうえ、さらに法外な家賃をふっかけてくるというのである。

近年、古いマンションなど不動産関連の押し買いトラブルが多数発生している(写真はイメージ)
近年、古いマンションなど不動産関連の押し買いトラブルが多数発生している(写真はイメージ)

あとから安価でマンションを売ってしまったと気づいても、不動産売買になるとクーリング・オフは適用外だ。それだけでなく、警察に行っても法律的に違法となるケースは少ないという。

「不動産売買に関しては、契約と同時に手付金が業者から支払われます。手付金を受け取った後に契約解除をすると民法では『手付倍返し』があるため、たとえば50万円の手付金なら、その倍である100万円を業者に払わなければいけません。そうすることで、業者は家が買えなくても、手付倍返しで違法性なく儲かるんですよ。

持ち主が高齢者で認知的な部分に疑いがある場合は、弁護士を立てることで契約成立直後でも取り戻せることもありますが、その場合は費用も時間もかかります」(同前)

不動産売買では、クーリング・オフが適用されない。契約を解除するには、手付金の倍を業者に支払う必要がある(写真はイメージ)
 
不動産売買では、クーリング・オフが適用されない。契約を解除するには、手付金の倍を業者に支払う必要がある(写真はイメージ)
 

悪質な業者は様々な手でお金を騙し取ろうとしてくるので、十分気をつける必要があるだろう。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班