変わる銀座の街と客層
大学入試で上京し、19歳で洋服ほしさに始めたスナックでのバイト経験を経て、20歳で銀座で働き始めた望月明美さん(以下、望月ママ)。大型店を3店舗ほど経験したあとに、31歳で高級ナイトクラブ『ル・ジャルダン』を開業。
その後、銀座で次々と店舗を拡大し、今年10月には7店舗目をオープンする予定だという。
「今の夜の銀座では、お店の入れ替わりがとても早くなっています。昔は銀座8丁目の名の通った超一等ビルに店を構えるには、厳しい審査を通過する必要がありました。店の格式やママの経歴なども審査されるので、たとえ潤沢な資金があっても、簡単に借りられるものではなかった。
でも最近は、ビルのオーナーが替わったことも影響しているのか、有名ビルとされる大型テナントに地方のキャバクラ店が入ってきています。これは、ひと昔前では考えられなかったことです」(望月ママ、以下同)
また店舗だけでなく、銀座に来る客も変わってきているという。
「もちろん、今でも東証プライム市場やスタンダード市場に上場している企業のお客様はいらっしゃいますよ。その手のお客様に機転の利く女の子をつけて、商談を転がす……なんて銀座ならではのシーンも見られなくはないです。
でもコロナ禍以降は、新興富裕層というか、ジーパンやサンダルのようなラフな格好をした『いったい何をしてこんなに稼いでいるの?』というお客様もいらっしゃいます。以前までのスーツ姿のお客様で溢れていた銀座と比べると、クールビズや服の流行もあるのでしょうけれど、ちょっと信じられない状況です」
ル・ジャルダンだけに限らず、銀座では客からもらった名刺からご挨拶のお手紙を送る習慣があったが、最近ではそのような挨拶を辞退する客も増えているという。
「20〜30年くらい前までは超有名な会社へも着物姿でプレゼントをお届けすることは一般的な営業活動でしたが、最近ではそれを辞退されることはもちろん、宅配便で贈り物を送ることさえも嫌がられるお客様が増えました。銀座は夜の秘書室だと誇り高く感じていたのですけれども、寂しい限りです」
一方で「お名刺をインターネットで検索すると、たしかに会社やその方のお名前は出てくるのに、《あて所に尋ねあたりません》のスタンプが押されて郵便局から手紙が戻ってくる不思議なこともあります」と望月ママは笑う。
詐欺などで手にした金銭をもとに、クラブやキャバクラで豪遊するが犯罪者がいるのは世の常だが、ル・ジャルダンにもかつてそのような客が出入りしたことがあったそうだ。