“号泣辞職”の元副知事が増額を指示か 

この問題に注目してきた丸尾牧県議は「所管の地域産業経済課によれば、昨年10月ごろに、事業者への伴走支援を実施する金融機関への補助の継続を決めています」と話す。

丸尾県議が情報公開請求で開示を受けた優勝パレードの「協賛企業一覧」には関西を代表する有力企業を筆頭に、112社の名が並ぶ。

寄付金額は公表されていないが、金額の規模によって企業は4ランクに分けられ、上から3番目の「シルバー」には、告発文書で「幹事社」と指摘された信用金庫を含む兵庫県内の金融機関が名を連ねている。

問題の支援事業で補助を受ける金融機関も調べた丸尾県議は「補助対象の20社の中で12社が優勝パレードで寄付をしている形です」と話す。

疑惑のスキームの「司令塔」と名指しされた片山副知事は7月末に退任すると発表し、7月12日に記者会見を開いた。

その場で「阪神・オリックスの優勝パレードについてですが、必要経費について、企業からの寄付を募ることとなり、信用金庫への依頼は私が行いましたが、県補助金をキックバックするようにと言及したことはありません。あくまでも依頼を行ったものです。信用金庫への補助金は前期比50%減少となっています」と主張した。

退任発表の際は号泣するようなしぐさをした片山副知事だが疑惑は消えない(写真/共同通信社)
退任発表の際は号泣するようなしぐさをした片山副知事だが疑惑は消えない(写真/共同通信社)

最後の「50%」のくだりは、前年より補助金が減っているのだからパレードを念頭に多く支出したのではない証左だと強調する意図だろう。

確かに前期の令和4年12月の補正予算では同じ名称の事業費額は8億円で、昨年度は半減している。

だが、県関係者によると、状況は全く違う。

「実は担当の地域経済課はこの事業の額を1億円で計上していました。県内の資金需要などを計算して積み上げた結果、令和5年度に必要だと算出したのがこの額です。ところが片山副知事が『これじゃ足りん。4億にせえ』と口をはさみ、その額にせざるを得なくなったのです」

片山知事はなぜ4億という数字を挙げたのか。

「まったく分かりませんが、去年8億だったからその半分くらいはとかなんとか、めちゃくちゃな理由でした。

最初の1億は細かな積み上げを基に出した数字だったのに4億なんて根拠も何もない。結局、片山副知事から指示が出た4日後に斎藤知事への説明がありましたがその時も積算根拠を説明できなかった。

『ここには今1億円と書いてありますが、これから変わるかもしれません』という程度の説明をして、それが通ってしまったんです。それが去年の11月14日の出来事です」(同関係者)

7月19日に兵庫県庁前で行われた抗議行動で掲げられたプラカード(撮影/集英社オンライン)
7月19日に兵庫県庁前で行われた抗議行動で掲げられたプラカード(撮影/集英社オンライン)

 こうして作られた資金が信用金庫に流れ込み、それを原資にパレードの寄付が実際に行われていたとなれば完全な犯罪スキームだ。そこに県の業務として携わったBさんが自死をしているわけである。

当然、労災である「公務災害」の可能性を探る必要が出てくるが、それが行われればBさんがどのような仕事をしていたのかが明らかになる。そこで県当局は、Bさんが亡くなったこと自体を認めない行動に出る。