告発当初は在阪メディアも取り上げず

Aさんは3月12日付で、斎藤知事のほか、片山安孝副知事や井ノ本知明総務部長ら庁内で“4人組”と揶揄される側近に関する7項目の疑惑を書いた文書をメディアに発送した。

文書には斎藤知事が日常的に県職員にひどいパワハラを繰り返し、側近ともども自治体や企業にたかっている、という問題行動だけでなく、重大な告発が記されていた。

①プロ野球の阪神とオリックスの優勝を祝し行われた昨年11月のパレードの費用をねん出するため県が信用金庫に補助金を増額しそれをキックバックで寄付させた

②昨年7月の斎藤氏の政治資金パーティーに絡み片山副知事が主導し関係団体に補助金の減額をちらつかせてパーティー券の購入を強要した

③2021年の前回知事選で4人組が斎藤氏のために事前運動を行い論功行賞で昇任している―など、事実なら重大な金融・選挙犯罪になる内容だ。(♯1

斎藤元彦知事(右)と、片山副知事(左)(写真/共同通信社)
斎藤元彦知事(右)と、片山副知事(左)(写真/共同通信社)
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「告発文の存在を知った斎藤知事は激怒し、4人組と共に裏切者の“摘発”を始めました。県当局はAさんに目を付け、3月25日に片山副知事が他の幹部1人を伴い西播磨県民局を突然訪問、Aさんのパソコンを持ち去りました。

パソコンに文書のデータが入っていたこともあり、Aさんはこの日、文書作成を県当局に認めたようです」(県関係者)

斎藤知事はその2日後の3月27日の記者会見で、「ありもしないことを縷々と並べたことを作ったと本人も認めている。不満があるからといって、業務時間中なのに、嘘八百含めて文章作って流すという行為は公務員として失格だ」と発言。

Aさんが嘘を書いたと決めつけて同日付で西播磨県民局長職から解いたと発表した。同月末で退職予定だったAさんは退職を認められず、停職3ヶ月の懲戒処分にされた。

19日、兵庫県庁前で行われた斎藤知事の辞職を求める抗議行動で掲げられた、手書きのプラカード(撮影/集英社オンライン)
19日、兵庫県庁前で行われた斎藤知事の辞職を求める抗議行動で掲げられた、手書きのプラカード(撮影/集英社オンライン)

「告発は完全な公益通報であり、内容を検証すべきだったのに大阪や神戸のメディアは当時、斎藤知事や県当局の発表になんの批判もせず、Aさんは怪文書を書いた不満分子と扱われました。

関西のメディアは大阪維新の会への批判精神を欠いており、維新の推薦を受けて当選した斎藤知事についても、以前からパワハラのひどさは有名だったのにまったく取り上げなかったほどです。

しかし、4人組の一人である原田剛治・産業労働部長が、企業からコーヒーメーカーの提供を受けていたと読売新聞が4月にスクープ。

さらに丸尾牧県議が県職員へのアンケートで、パワハラやたかりに関する証言を得たと発表したことで、ようやく告発内容自体に目が向き、県議会で地方自治法100条に基づく調査特別委員会(百条委員会)が設置されるまでになりました」(県関係者)