保有する現金は1年でおよそ3億円が消失
ヒロタは2023年10月1日に東京と大阪に旗艦店をオープンしている。直営店が減少する中での反転攻勢だった。
新たにオープンした「ヒロタ 東京・東銀座店」は、歌舞伎座の横という絶好のロケーションだ。ヒロタのシュークリームは4個入りの商品が定番。観劇を終えた人々のお土産需要にも期待できる。
ブランドのリニューアルも実施。懐かしさと今っぽさの融合を図ったパッケージや店づくりを行った。かつての「洋菓子のヒロタ」をよく知る年配と、ブランドを知らない感度の高い若者の両方をターゲットにしているように見える。
しかし、期待していた売上には至らなかったと、経営陣は素直にその効果が限定的だったことを認めている。
ヒロタは2024年3月期に1億4800万円の債務超過状態となった。上場廃止を回避するためにもこれを解消しなければならないが、キャッシュフロー上も相当な危機に瀕しているように見える。
2024年3月末時点の手持ちの現金は9900万円。前年から3億円近く減少している。売掛金が3億1000万円あるものの、買掛金が1億8400万円、未払金が2億200万円、1年内返済予定の長期借入金が1億200万円あるのだ。
委任状争奪戦の悪夢再び?
ヒロタは2024年5月に値上げを実施し、物流費などを削減して利益率を改善。フランチャイズ事業を始めてビジネスの拡大を目指すとしている。
2025年3月期は売上高を前期比37.5%増の32億5000万円、1億5000万円の純利益を出すとの予想を出している。
リニューアルや旗艦店の出店効果が限定的だった中、売上を1.4倍に引き上げるのは容易ではない。今後は第三者割当増資など資本性のある新たな資金調達が視野に入るのではないか。
ただし、創業100周年の一大イベントという好カードをすでに切ってしまったヒロタに対して、快く出資する投資家や事業家は多くはないはずだ。
21LADY時代は増資によって敵対する勢力を生み出すきっかけを与え、委任状争奪戦の末に広野道子氏失脚という退任劇を招いた。それだけに出資者の慎重な見極めが必要だ。まさに綱渡りの資金調達である。