鹿児島県医師会による“不自然な経緯”
まずは、鹿児島県警による一連の問題を振り返っておこう。
「鹿児島県警に全国の目が向いたのは、今年3月に退職した県警元警視正で前生活安全部長の本田尚志被告(60)=国家公務員法違反罪で起訴=が、内部資料をフリージャーナリストに漏えいしたとして5月30日に逮捕されたことがきっかけです。
本田被告はその動機について、盗撮容疑がある現職警察官への捜査を県警トップの野川明輝本部長が止めたとし、『県警警察官の犯罪行為を、野川明輝本部長が隠蔽しようとし、いち警察官としてどうしても許せなかった』と主張しました。これが本当なら、本田被告の行為は秘密漏えいではなく、公益通報にあたる可能性があります。
しかも、県警が別事件の捜査名目で福岡のニュースサイト『ハンター』に行なった家宅捜索で押収した資料から、本田被告の“容疑”が浮上したことがわかりました。その後、多くのメディアが取材機関への強制捜査を批判し、問題はさらに拡大しました」(社会部記者)
「ハンター」へのガサの名目になった事件こそが、医師会職員A氏による強制性交疑惑から生まれたものだった。
「始まりは、民間病院に務める看護師の女性Bさんが、2021年8~9月に新型コロナウイルス感染者の宿泊療養所でA氏から計5回、強制わいせつと強制性交の被害を受けたと2022年1月に刑事告訴をしたことでした。
ところが県警の捜査が遅々として進まないうちに、A氏を雇用していた県医師会は2022年9月、調査委員会がA氏の主張に沿う形で、性行為は『合意の上である蓋然性が高いと思慮される』と結論づけたと発表しました。
肝心の県警の捜査はさらに遅れ、告訴から1年半も経った2023年6月になってA氏を書類送検しました。
これを受けた鹿児島地検は、2023年末に嫌疑不十分でA氏を不起訴としましたが、Bさんは検察審査会に審査を求め、民事でも損害賠償を求める訴訟をA氏相手に起こしています。
捜査機関が結論を出していないのに、捜査権限もなく性犯罪被害者の支援に長けているわけでもない医師会が、身内のA氏の犯罪を否定する結論を先に出し、結局A氏の刑事処分は見送られました。この不自然な経緯は、当時から注目されていました」(地元紙記者)
そして、A氏の立件回避を図る動きがあったと県警の内部資料を引用して報じていた「ハンター」を、鹿児島県警は4月8日に家宅捜索したというわけだ。ハンターが指摘する疑惑には、実体があったのだろうか。