ガサは内部通報者と報道機関へのみせしめか?

県警は地方公務員法違反容疑で元巡査長、藤井光樹巡査長(49)=後に懲戒免職、起訴=を4月8日に逮捕した直後、「見返りの情報提供を期待して資料を提供した」と藤井被告が供述したと発表していた。しかし資料提供の前に県警の行動を謝罪していたことから、関係者は「県警内の不正を明らかにしようとする正義感から行なった公益通報だ」と指摘している。

県警は藤井被告の逮捕と同じ4月8日に、福岡市にあるハンターの中願寺純則代表の自宅を捜索してスマートフォン2台やパソコン、取材ノートなどを押収した。

このとき押収されたパソコンには、今年3月に退職した同県警元警視正の本田尚志・前生活安全部長(60)が北海道のフリージャーナリストに郵送した別の事件の捜査記録のデータもあり、この記録の流出に気づいた県警は5月31日に本田容疑者も国家公務員法違反容疑で逮捕した。

しかし本田容疑者が「県警警察官の犯罪行為を、野川明輝本部長が隠蔽しようとし、いち警察官としてどうしても許せなかった」と資料持ち出しの動機は不正告発だったと主張したことで、逮捕は内部告発をつぶす目的ではないかとの見方が噴出している(♯1)。

中願寺代表によると、県警捜査員は差し押さえの際、令状の提示をせず、パソコン内にあったデータの一部を同意なしに消去している。

「ハンターへの強制捜査の異様さが徐々に明らかになり、このガサ自体が、内部通報者と報道機関に対する見せしめ目的だった可能性が強まっています。

県警は藤井被告と本田容疑者の2人の公益通報をつぶすために捜査権を行使したのではないかとの疑惑の弁明に追われる状況になっています」(社会部記者)

会見する野川明輝本部長(共同通信社)
会見する野川明輝本部長(共同通信社)
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発端は医師会職員の看護師への強制性交事件 

発端となった強制性交事件は2021年9月、新型コロナウイルス感染者の療養施設で医師会職員だった男性A氏が民間病院から療養施設に派遣された看護師の女性Bさんを複数回襲ったとされるものだ。

男性は普段から自分の父親が警察官だと周囲に話しており、Bさんは被害を訴えることを当初ためらったが、様子がおかしいことに気づいた同僚に被害を告白した。これを受け勤務先でBさんを支援するCさんが21年12月にA氏を呼び問いただすとA氏は「強姦です」と認めたという。

「Aはそのとき平謝りでした。しかし直後に慰謝料を25年の分割で払うと言い始め、さらにその後『合意だった』と主張を変え周囲に吹聴しはじめました。

Bさんは22年1月に鹿児島中央署に告訴しましたが、一度は女性警察官に『望む結果にならない』と言われ拒まれています。弁護士の支援を得て告訴状を提出すると、今度は当時の県医師会会長が『同意があった』と主張してA氏をかばう動きを見せました」(Cさん)

結局、医師会は22年9月、「同意があった」との主張を曲げないまま、A氏の行為は不適切だったとして停職3か月の懲戒処分を出し幕引きを図った。A氏は翌10月に依願退職したが、医師会有力メンバーが経営する施設に再就職している。