県警の捜査は「途中から一生懸命になった」

県に糾弾された医師会調査のあと、県警はさらに9カ月の時間をかけ、2023年6月にA氏を書類送検した。そこで起きたのが、元県警巡査長・藤井光樹被告(49)=懲戒免職、地方公務委員法違反罪で起訴=による捜査情報の持ち出しだ。

「書類送検の3日後から、藤井被告は『告訴・告発事件処理簿一覧表』など、この事件の捜査書類を複数回持ち出しました。本田被告に先立つ“第1の情報漏洩”と言えます。

これを入手した『ハンター』は、当時の鹿児島中央署長X氏が主導し、A氏の立件回避を図るかのような捜査指揮が行われたと、追及報道を本格化させたのです」(地元記者)

流出した鹿児島県警の捜査資料(「ハンター」提供)
流出した鹿児島県警の捜査資料(「ハンター」提供)

書類送検が行われたのにもかかわらず、藤井被告が書類をハンターに渡したのは、「不審な捜査指揮を明るみに出し、地検にまともな処分を促す狙いがあったのかもしれない」との指摘が出ている。

これは、A氏が書類送検される直前の2023年5月に、藤井被告がBさんを支援する雇用主・C氏を突然訪ね、「自分は警察を代表する立場はないが、被害に遭われた女性に関しては、本当にうちの警察はよろしくない対応を取って、誠に申し訳ありません」と謝罪していたためだ(#2)。

この謝罪後に捜査情報を外部に持ち出した藤井被告は、ハンターへのガサ入れと同じ4月8日に逮捕されている。

県警はBさんの告訴を受け、きちんと捜査をしたのか。これについて県医師会・大西副会長は6月27日の記者会見の終了直後、県警の動きを問われ、次のような言葉を口にした。

「それは途中で方針が変わったんですよ。やっぱり、それは僕らもよくわかりませんけれども、僕らからしてみれば、警察はとりあえず調査を一生懸命して、途中から。そして判断を仰ごうと。上の方に。そういう形で書類を出したわけですよね」(大西氏)

警察が“途中から”一生懸命になったとは、何を意味するのか。真意を問おうとすると、医師会関係者が「軽々に言わんでいいですよ」と割って入り、大西氏の言葉は止まった。

鹿児島県警本部(撮影/集英社オンライン)
鹿児島県警本部(撮影/集英社オンライン)
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鹿児島県警本部は、警察官がA氏に「事件性がない」と発言をした事実があるのかという質問に「個別事件に関することであり、回答を差し控えさせていただきます」と答え、否定も肯定もしていない。

一連の不祥事を受け警察庁は6月下旬から同県警に対し特別監察を始めているが、県警によると、強制性交疑惑の捜査は対象に含まれていない。膿を出し切るには、この問題にメスを入れるべきではないのか。

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取材・文 集英社オンラインニュース班