小田和正「積極的に一人になったわけじゃないからね」と語るソロ活動への思いと270万枚の大ヒット曲『ラブ・ストーリーは突然に』の誕生秘話
オフコース解散後、ソロでの活動を決意した小田和正。「一人でやっていけるという確信もなかった」と当時を振り返って語る、あのときの思い、そして間もなくして生まれた空前のヒット曲『ラブ・ストーリーは突然に』の誕生秘話をお届けする。
本稿は、小田和正著『時は待ってくれない 「100年インタビュー」保存版』(PHP文庫)を一部抜粋・編集したものです。
『時は待ってくれない』#2
大ヒット曲『ラブ・ストーリーは突然に』の誕生秘話
──外の世界と交流し、つながりをもつようになってまもなく、大きな出来事として、テレビドラマの主題歌『ラブ・ストーリーは突然に』の大ヒットがあります。これは、どうしてお受けになったんですか。
レコード会社のスタッフから、「ドラマに使う曲が欲しいというオファーがあるんだけど」という話がきたときに、たまたま、ある曲のカップリング曲があって、「これをプレゼンしていいですか」と言われたんだ。
こっちはもう、べつに望みもないし、期待もないから、「いいよ」って返事をしたら、「向こうはいいって言ってます」と。「あれでいいんだ」と思いつつ、「ところで、どんなドラマなの?」って聞いたら、内容も知らずにもっていったというような話でね。
それで、いろいろ聞いたら、「じつは、『Yes‐No』の延長線上にあるような曲が欲しかったんですが、これでも十分いいです」という返事が返ってきたわけですよ。
そのときに、「なんだ、本当に欲しかったのは、これじゃないんじゃん」と思って、「じゃあ、書くよ」と言ったんだよ。時間がどれくらいあったか覚えてないんだけど、たまたまアイデアを一つもっていたから、「じゃあ、これで書いてみよう」と思ったんだよね。
──『ラブ・ストーリーは突然に』は270万枚の大ヒットとなり、当時のCDの最高売り上げ記録を書き換えました。
一人になってから、ほんの1、2年くらいの出来事だったのかな。みんなびっくりしたね。
みんながびっくりして、どうなのこれ、って言って。だから、ちょっとごほうびが早すぎたなと思ったの。このヒットに足をすくわれたりしちゃいけないなという気持ちがすごくあった。
スタッフにも、「これはたぶん、まぐれ当たりみたいなもんだから、こんなときこそ謙虚な気持ちで臨もう」と言ったし、そんなことを、すごく事務所で話しあったね。
著/小田和正
サムネイル/左:『時は待ってくれない 「100年インタビュー」保存版』(PHP文庫)より。右:1991年2月6日発売『Oh!Yeah!/ ラブ・ストーリーは突然に』(Sony Music)
『時は待ってくれない』 (PHP文庫)
小田 和正
2024/4/3
990円(税込)
200ページ
ISBN: 978-4569904078
2017年8月13日、NHK・BSプレミアムの人物ドキュメント番組「100年インタビュー」で放送され、大反響だった「アーティスト小田和正~時は待ってくれない~」。
本書は、それを元に構成した単行本(2018年5月刊行)を文庫化したものです。
前半では幼少・少年時代、学生時代、オフコース時代、そしてソロ活動の時代と、小田和正氏の半生を振り返り、後半ではファンの思いに応えることなどのトピックスを紹介。
滅多に聴くことのできない小田氏のリアルな言葉と貴重な写真を所収しています。
中高一貫の進学校で野球部のキャプテンを務めながら練習中にいつも歌っていたこと。
鈴木康博氏との出会いがオフコースの原点だったこと。医学部から建築の道へと進路を変更し、大学院まで行った理由。
大ヒット曲「さよなら」「ラブ・ストーリーは突然に」誕生秘話。九死に一生を得た自動車事故で変わった人生観。メロディ、歌詞のつくり方……。
小田氏がずっと純粋に音楽が好きだということがひしひしと伝わってきます。
「うまくいったなと思うことは、全部、つらい思いをしたあとだった」「時は待ってくれないから、目いっぱい走った。でも、本当にがんばろうと思っている人には、時はきっと待ってくれる」――70歳の節目に語られた、小田和正氏の素顔と音楽への思い、未来を築く人たちへのエールが詰まった一冊!