ドイツで起きたハイパーインフレのトラウマ

国債の発行が必要な理由は、金融機関のビジネスを支え、ひいては資本主義社会の発展を促進するためだ。米国ニューヨーク市場や、英国ロンドン市場などでは、国債を介した取引が最も多い。

国により国債発行額は異なるものの、世界中の金融市場で国債の取引が行われており、金融の専門家も国債の必要性を認識している。

もっとも、ドイツは先進国で唯一、国債の発行額が少ない国だ。第1次世界大戦後、ドイツは生産力が大きく低下して物資が不足し、結果的にお金があり余るようになった。それで急速にお金の価値が下がり、物価が急上昇した。いわゆるハイパーインフレが起きてしまったのだ。

戦争時のドイツの様子 写真/Shutterstock.
戦争時のドイツの様子 写真/Shutterstock.

このトラウマから、ドイツはインフレを抑制する政策を採用している。国債を発行すると、市場に余分なお金が流入してインフレが引き起こされる可能性があるから、国債の発行を控えめにしている。

ドイツのような例外は除いても、国債は金融市場で重要な役割を担っている。国債が借金だからといって、全て消えてなくなればいいというのは、無知からくる暴論だ。

国債は未来への投資

2011年、東日本大震災が起きた。その後、復興には多額の費用が必要だということで、2012年に「復興特別税」なる新たな税が導入された。

この復興特別税は、「復興特別法人税」と「復興特別所得税」から成り、所得税、住民税、法人税に上乗せされた。法人税の復興特別税は2014年に終了したが、所得税の復興特別税は2037年まで続く予定だ。

実は、災害復興に必要な資金を調達するには、国債を発行するのが効果的だ。災害時に増税することは経済に悪影響を及ぼす愚策である。災害で大打撃を受けた地域は消費が低迷する。被災地の経済を支えるためには、幸いにも被害を受けなかった地域の経済力が必要だが、増税はその力を大きく削いでしまうのだ。