税務署は名義預金を見つけたい
税務の世界では、申告書に書かれていない財産(故意であるか過失であるかを問わず申告書に「表現されていない」財産)を「不表現資産」という呼び方をします。
不表現資産のうち最も見つかりやすいのが名義預金です。
名義預金とは、口座名義人がお金を出していない預金のことをいいます。
相続が発生したとき、亡くなった人が配偶者や子供などの口座を作っていて、亡くなった人が管理していた場合に名義預金と見なされ、相続財産に戻すことになるので相続税の対象となります。
税務署は市町村役場から死亡の連絡が入ると、「相続税の対象となるくらいの財産がありそうだな」と思えば、まず亡くなった方の自宅数キロ四方にあるすべての銀行にその人自身やその人の家族の銀行預金について問い合わせをします。
税務署から「誰にいくらの預金がありますか?」と尋ねられると、銀行は誠実に答えます。ここで名義預金のあたりをつけるわけですね。
たとえば夫婦のうち夫が亡くなったとき、妻名義の預金が見つかったとしましょう。果たしてこれは本当に妻自身の財産なのか?と税務署は考えます。
妻自身に収入があったり、妻の親から引き継いだ財産があったりした場合は別として、専業主婦なのに何百万、千万単位の預貯金を持っていることがわかると、税務署としては「このお金の出どころはどこなんだ?」と考えます。
「これは妻の名義を借りてお金を移動させただけで、本来は亡き夫の財産なのではないか」との推測が成立します。
このように名義は他の人の名義であっても、お金の出どころが亡くなった人である預金を「名義預金」といいます。
相続税の税務調査でいちばん見つかりやすく、見つかったら納税者はほぼ言い逃れができないので、税務署としても見つけたいのが名義預金なのです。