富裕層でなくても税務署はしっかり見ている

2015年の相続税法改正前は今よりも基礎控除額が多かったことから、「相続税の課税対象=お金持ち」のイメージを持ち続けている人が少なくありません。

しかし改正後の基礎控除額は、従前の6割に縮小されています。たとえば、改正前であれば相続人が3人いる場合、基礎控除の額は8000万円でしたが、現行では4800万円となっているのです。

税制が変わって以来、相続税の課税対象者が拡大しました。

国税庁によると2021年(令和3年)中に亡くなった人143万9856人のうち、相続税の課税対象となった人の数は13万4275人で、課税割合は9.3%でした。

改正前の2014年(平成26年)に亡くなった人約127万人のうち相続税の課税対象となったのが約5万6000人、課税割合4.4%であったのと比べると、倍以上になっています。

もう相続税の課税対象となるのは「お金持ち」だけとは限りません。

関東地方でいえば、北は浦和、東は千葉、南は横須賀、西は高尾までの間でローンの払い終わった持ち家があり、定年まで勤め上げて退職金をもらい、2000万円くらいの貯蓄のある人であれば、課税対象になる可能性が高いです。

課税されるタイミングは「二次相続」のときです。

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二次相続とは?

二次相続とは、最初の相続(一次相続)で配偶者と子供が相続したあと、その配偶者が亡くなったことで発生する二度目の相続のことです。

平均寿命からすると夫が先に死亡することから、残された妻が経済的に困窮することのないよう、相続税法では、配偶者の税額軽減の枠が多かったり、一定の大きさの土地を評価減する「小規模宅地等の特例」があったりと、さまざまな制度があります。

Aさんの家の例で説明すると、Aさん亡きあと、妻がこれらの制度を利用できるため、結果として相続税の課税対象となりません(ただし申告は必要です)。

しかし妻が亡くなったときには、これらの制度が利用できないため、相続税の課税対象となる確率が高いのです。

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実際、父親がサラリーマンで母親は専業主婦、東京近郊に持ち家と2000万円以上の預貯金・有価証券があり、二次相続で課税対象となったという方は少なくありません。

納税額は40万円から200万円とさほど大きくはないのですが、課税されている以上、相続税の税務調査の対象にならないとも限りません。

申告はきちんとしておくようにしましょう。