失速する不動産業界の将来

バブル崩壊後の不動産業界には、どのような将来が待ち受けるのか。

中国は社会主義国家であり、制度だけを見れば土地は公有制である。また、政策面において国有企業が優先されているのも特徴的といえる。

図表9に示したのは中国企業資産総額ランキングトップ10の推移である。2023年、民営企業のアリババが10位に入っているが、他はすべて大型国有企業である。石油などのエネルギー企業や金融機関および鉄道建設など重厚長大企業ばかりだ。

歯止めの効かない中国の「不動産倒産連鎖」についに政府が「救う会社、救わない会社リスト」を作成…これから中国経済が直面する“失われた30年”_2

これらの国有企業は政策的に優遇されているから、市場を独占して規模がますます大きくなる。胡錦涛政権(2003~13年)の10年間、国有企業による市場独占が一段と強化され、「国進民退」が進められた。

2009年、中国政府はリーマンショックの影響を抑えるため、4兆元の財政出動を実施したが、そのほとんどは大型国有企業に流れた。

一方、中国の不動産デベロッパーの大半は民営企業である。会社の規模は国有企業に及ばないが、収益性が高いため、そのほとんどが創業から20年程度で中国屈指の億万長者となった。

図表10に示したのは中国の億万長者、すなわちミリオネアトップ10の推移である。わかりやすいように、経営者名を会社名に置き換えて示した。

2020年には、5位に恒大集団の許家印がランクイン、7位は碧桂園の楊国強だった。不動産バブル崩壊以降の2023年のランキングを見ると、中国本土のデベロッパーはすべて抜け落ちている。7位の長江実業は香港の財閥だ。

これまでの20余年間、中国経済にとって不動産業は間違いなく力強いエンジンだった。だが2023年に不動産バブルが崩壊し、中国経済は失速してしまった。習政権も有効な経済政策を打ち出せていない。

(画像)注:①■は不動産業、②表中に示したのは社名だが、ミリオネアはこれらの会社の創業者または経営者である。
(画像)注:①は不動産業、②表中に示したのは社名だが、ミリオネアはこれらの会社の創業者または経営者である。

むろん、中国不動産業がこのまま衰退するかどうかは分からない。中国はこれからも都市再開発を進めていく必要があるからだ。

アリババの創業者 ジャック・マー
アリババの創業者 ジャック・マー

重要なのは、不動産業を発展させるための市場環境と市場のルールをきちんと整備していくことである。不動産業は単なる建設業だけでなく、金融の面でも、個人にとって資産を運用する重要な市場である。

ただ、中国における土地の希少性を考えれば、その土地が一握りの富裕層に過度に集中してしまうことは社会不安につながる恐れもある。なにより、中国共産党は現在の体制を社会主義と謳っているのだから、これ以上格差の拡大を看過してはならない。

不動産開発ブームと不動産バブルは単なる経済の問題ではなくて、中国社会に内在する政治経済問題の縮図である。