人間は愛が振り切れると怖さを感じる生き物

最近の流行語に「尊い」という言葉があります。しかし、私にとっての尊敬語の最上位は「恐怖」です。

「尊い」を越える表現は「恐怖」…「米津玄師こわい」と書いたブロガーが伝授する、他人に“伝染させる”文章の究極テク_1
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対象の圧倒的な才能を目の当たりにしたときに感じる、「こんな天才が同じ地球上に存在している」その事実が恐怖となるのです。

例えば、私が今この世で恐怖を感じているアーティストの一人に「米津玄師」がいます。2018年に彼がリリースした楽曲『Lemon』を初めて聴いたときの感情はまさしく「恐怖」だった。それを綴った文章が以下です。

米津玄師のイメージは、春画描いてる浮世絵師みたいな名前のとおり「気持ち悪いのに気持ち良い音楽作ってるド変態」だと思ってた。

「好み」を超えて『米津玄師』の名前を知った時から曲が流れるとどうしても無視できない。やってることは1ミリも理解できないのに「なんかすげえこいつ…」ということだけは異常に伝わる。得体の知れない化け物。

その「気持ち悪さ」は、例えば『ポッピンアパシー』や『MAD HEAD LOVE』の謎の電子音のような、普通にそれだけ聴いてると不快にすら感じる部分なんだが、米津は逆に利用して印象づけてたり「違和感」にしかならない音を他の音と組み合わせることで「気持ち良い」に変換させてくる。

それはアレンジだけじゃなく、米津自身のザラついた声も「そのメロディにその言葉当てるか」っていうような歌詞も、良くも悪くも強制的に聴いた人間の脳裏に刻まれる音楽を描く狂気のエロ春画舐め郎、そんな印象だった。

それを踏まえてこの『Lemon』。怖すぎる。全音「気持ち良い」に振り切ってる。声も歌詞もメロディも気持ち良さしかない。歌詞の内容は終始マイナスなのに体揺らしてクラップしながらリズム取りたくなる感じとか不自然なほどに完璧だった。

米津玄師にしては不自然すぎるくらいに「わかりやすい良い曲」「わかりやすい良い歌詞」をやってる。メロディ、歌詞共に「ヒト科が好む音」しか鳴ってない。1億人が好む音楽。ギターもストリングスもAメロで突如ブチ込まれる「ウェッ」も、本当に細かいところまで残らず「国民的ヒット曲」だった。