ボディビル競技という過酷な世界
――ビルダーになって、よかったことは?
実は、この競技に出会わなきゃよかったと思うときもあるんです。なぜかというとあまりにもいろんな悩みを抱えてしまうから。筋トレって好きでやっているだけなら問題ないのですが、競技として大会に出るとなると、過食してしまったときに「私はダメだ」って自分を責めてしまったりする。
あと大会で結果を出せたとしても、その後は、そのときの頂点の身体を維持しなきゃいけないっていうプレッシャーが生まれ、またこの身体を作れるのかという不安に悩まされ続けるわけです。一度でも最高峰の身体を手にした人は、多かれ少なかれ、そういう葛藤を抱えています。そのせいで躁鬱っぽくなってしまう選手もいるし、常に自分の心との戦いなんですよね、この競技は。
そういった体験でわかったのは、筋肉を作るのはトレーニングでもプロテインでもなくメンタルだということ。強くて折れないメンタルではなく、穏やかで安定したメンタル、つまり心が整わないと体は鍛えられない。本当に大事なのは筋トレではなく“心トレ”だと私は思っています。
――将来の夢はありますか?
めちゃくちゃ恥ずかしくて言いにくいんですけど……幸せな家族をめざしてます(笑)。みんなが体を作ることに真剣に取り組んでいるので、えてしてぶつかりがちなんですよ。それぞれが頑固な職人気質というか。そこをうまくまとめていくのが私の役目だと思っていますね(笑)。
取材・文/若松正子 写真/集英社オンライン編集部