夫の鬼の特訓とどんどん変わる体

――いざトレーニングを始めてみると、わずか4ヶ月後の大会(東京ノービス選手権大会)でいきなり1位に。ド素人だった人が数ヶ月でそこまで仕上げるのはほぼ奇跡だそうですが、どんなトレーニングを?

夫のスパルタ特訓の賜物です。もうほとんど星飛雄馬(漫画「巨人の星」)状態でした。倒れても夫に引きずり上げられ、「もう帰れ!」と暴言を吐かれ、昭和のスポ根を押し付けられました。

通っていたジムでも有名なあぶない夫婦になっていて、みんな、私たちを遠目で見ていました(笑)。おかげで鉄のメンタルになりましたけど、あんな特訓、今はもう無理ですね。あのときはデビュー戦で絶対優勝したいって気持ちが強かったし、自分の体がどんどん変わっていくのが楽しかったので耐えられましたけどね。

フリーポーズをしたいっていうのが1つの夢でしたけど、はじめて割れた腹筋を見たときは「こんな風になっているんだ」って感動しました(笑)。

腹筋バキバキのみゆきさんと次男の雄史さん
腹筋バキバキのみゆきさんと次男の雄史さん

――その後、多くの大会で成績を残し、いまでは日本が誇るトップビルダーのひとりですが、周囲の反応はどうですか?

TVなどのメディアにも取り上げていただく機会もあり、ボディビル業界では、家族の中で最も有名になったと思います。

それはそれでうれしいことなのですが、夫が「よかったね!」ではなく「調子に乗るな」と。きっと恩師である夫の存在に、もう少し敬意を払ってあげればよかったんでしょうね。

20数年前からのビフォーアフター。夫の勝実さんとみゆきさん
20数年前からのビフォーアフター。夫の勝実さんとみゆきさん

引退が頭をかすめる

――最後に出場された2021年の大会(日本ボディビル選手権)では、かなり苦労されたとか。

もともと私は股関節のかぶりが浅く、そのせいでトレーニング中に骨と骨が擦れて痛むようになりまして。なんとか3位を取れましたが、痛み止めの座薬を何回も入れながら、立っているのもつらい状態で、これを最後に引退しようと決めていました。半年後に手術をして人工関節を入れました。
 

――いったん引退を覚悟したものの、競技に復帰なさるそうですが、人工関節の具合はどうですか?

重たいものは持てないし、深くしゃがめない。そうすると脚の筋肉を作れないってイメージがありますよね。でも、ここからスタートして、それでも体を変えられるってことを証明したくなったんです。

3年間のブランクがあって、体の組織も変わっているし、年齢も重ねているので、自分でも未知の挑戦ですけど、日本3位のときのレベルにどこまで近づけるか、もしくはそれを超えられるかってところを目指しています。